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SAO−銀ノ月−
伝言
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は頭のどこにもなくて。また余計なことばかり考えてしまっていたのか、と日本刀の柄を握っていない方の手で髪を掻く。

「さ、早く行きましょ。ポイント取られちゃうわよ?」

『みんなー! 今日も来てくれてありがとー!』

 ようやく分かったか――と言わんばかりのリズの手が肩にポンと置かれ、気恥ずかしさを顔に出さないようにしながら、強く日本刀《銀ノ月》の柄を握り締める。すると先日のコボルトロード戦の時と同様に、上空のドローンからARアイドル《ユナ》の姿が映し出された。

『それじゃ、ミュージック〜スタート!』

「キャー! ユナー! こっち向いてー!」

 そしてユナのライブとともにボス戦が開始され、ポイントとステータスにボーナスが付くスペシャルステージの始まりだ。どんなボーナスかを確認していると、隣から聞いたことのない興奮した言葉が放たれていた。

「ライブがこんな近くで見れるなんて、無理してでも来て良かっ――」

「……グウェン?」

「あ……えと、悪かったわね! ファンなんだから! もう!」

 その高音の歓声の主はリズではなく、当然ながら俺でもなく。ならば残る一人たるグウェンは、俺たちの視線に気づいて咳払いをしつつ、照れ隠しのように忍刀を俺たちに振り回した。

「ストップ、ストップ! 知ってる? 一番活躍したプレイヤーには、ユナからご褒美があるんだって……」

「……それを早く言いなさいよ!」

 リズの起死回生の一言でグウェンの動きはピタリと止まり、ようやく忍刀はトーラスたちへと向き直る。ボーナスというと、先日のボス戦でアスナが受けた頬へのキスのことだったか。

「そうと決まれば、まずはあの二体、さっさと引き離すわよ!」

 バラン将軍とナト大佐、二体のボスはお互いの動きをカバーしあっており、迂闊に近づいていったプレイヤーをそのシミターで斬り裂いていた。近接プレイヤーを攻撃する隙に銃撃が二体を襲うが、遠距離攻撃の威力が低く設定されているゲームでは、あまり手傷になるには至らない。

「あんた、そのメイスで片方吹っ飛ばしなさい! そうすれば、共闘とか頭にない他の連中も分かるでしょ!」

「オッケー、任しときなさい!」

 あのデスゲームの頃にはあるオレンジギルドの長だっただけあり、ボスに向かって走りながらも自然とグウェンが指示を出す。分断作戦の鍵はリズが文字通り握っており、リズを後衛に俺とグウェンが二体のボスに接敵する。

「あたしたちで気を逸らすから、油断した方を全力でぶん殴りなさい!」

 ともに接敵した俺とグウェンに対し、二体のトーラスの合体攻撃が放たれるが、その頃には俺たちは既に別れていて。右に避けていた俺がバラン将軍、左に避けたグウェンがナト大佐と自然に相対する。


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