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SAO−銀ノ月−
伝言
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いることを免罪符に顔を背けた。背後から聞こえてくる悲鳴が断続的に聞こえてきてしばらく、そろそろ満足する頃だろうと振り向けば、ちょうどよくリズがいい笑顔でグウェンから離れていた。

「うん、ボス戦までのいい運動になったわね……!」

「ボス戦って言えば、アスナやクラインは来てないのか?」

「……他のとこにもボス現れてるらしいし、そっち言ってんじゃないの!?」

 携帯と缶コーヒーをリズに返しながら、9時に近づく時間を見ながら、残るメンバーがいないことに気づく。ただしその疑問はキレ気味のグウェンによってすぐさま氷解したため、手持ちぶさたになって無意識に《オーグマー》を撫で回していた。

「ごめんごめん、つい……ね?」

「つい、じゃないわよまったく……もう!」

「はいはい、お粗末さま」

 グウェンはそのままの勢いで、飲み終わったらしい紅茶のペットボトルをゴミ箱に投げつけたものの、あいにくとその狙いは大きくズレていた。まるでゴミ箱に入らなかったペットボトルを、リズが自らの缶コーヒーとともに捨てていく。

「ありがと。それに……ごちそうさま」

「いいわよ、どうせ無料クーポンのだし。さて……」

「……始まりか」

 リズの無料クーポンという言葉に、前回のボス戦で貰った牛肉大盛無料クーポンが余っていたな――などと思い返しながら、二人とともに《オーグマー》に付属する端末を取り出した。時刻はほぼ9時、ゲームが開始される時間だった。

『《オーディナル・スケール、起動!』

 音声認識によって世界が塗り替えられていき、先程まで周りに佇んでいたビルがさらに近未来的な代物になっていく。日本刀《銀ノ月》に変質した端末の鞘の手触りを確認していると、ビルを破壊しながら二体の巨人が俺たちの前に現れた。

「今日は二体もいるのね……」

「《バラン・ザ・ジェネラルトーラス》と《ナト・ザ・カーネルトーラス》……バラン将軍にナト大佐、本当にSAOのボスとはね」

「……グウェン、ボス戦に参加してたのか?」

「まさか」

 二体の二足歩行で立つ雄牛タイプの武装したモンスターを見て、忍刀を武器としたグウェンがそんな呟きをもらした。名前からしてまたも旧SAOボスだろうとは思ったが、ずいぶんと詳しいな――というこちらの問いには、グウェンは小さく首を振った。

「データを見たことがあるだけよ。でもま、死ぬことを心配しないであのSAOのボスと戦えるなんて、いい機会だと思うけど? ……って、なによ。呆けた顔して」

「……いや、そういう考え方もあるんだなって」

 心の底から素直に、グウェンの言葉に感心する。あのデスゲームに関わること故に神経質になっていたのかと、旧SAOボスと戦えるなんていい機会、なんて発想
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