外伝
外伝『魔弾と聖剣〜竜具を介して心に問う』―前章
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立場に縛られず、同じ目線で隣に寄り添える人間が適役だと。
「もう決めてしまったんだ。統才のない私がオステローデにできることは、『戦う』だけだから……」
笑顔の穏やかさに、ヴィッサリオンは息をのんだ。陽の光を受けて、こぼれる砂のように輝く姿もそうだが、なにより、彼女自身の《想い》に――
「オステローデは私のものではなく、戦姫のものだ。私が戦姫でなくなれば、オステローデは私のものではなくなる」
どこか……捨て鉢に吐いた台詞は、感情を帯びているように、風に乗ってヴィッサリオンの耳に届けられる。
自分には、統治の才能がない。何もしないほうが、むしろ最善とさえ思えてしまう。
せめて、次代の戦姫が、竜具が、私の『面影』を求めてくれたら――
ヴィッサリオンは思う。意志を持つ竜具が、意味もなく現れることはないと。
『新世界』は、常に民を必要とするように――
『新時代』もまた、新たな指導者を必要とする――
竜具は新時代の先駆けとなって、戦姫の前に現れるとしたら――
自然は意志の働かない『力学』によって動いているが、竜具は意志の働く『王学』によって動いている。それは、竜具にとって、『人の心』を学んでいく上では、避けて通れない道。
だからこそ、この『二人』に竜具があることは、絶対に意味のあるはずだと、ヴィッサリオンは――
「それでも、竜具はあなたを必要としているのです――――アリファールが『黒船』という時代の苦難から、民を救うために、私のところへ助けを求めたように――」
『得物』にくるまっている布をかすか外して、その美しい『翼を模した鍔』を、戦姫に見せる。見覚えのある鍔に、虚影の幻姫は見覚えがあった。
「それは!まさか!?」「おっと、黒船の登場のようですな」
聞きたいことをごまかされたのか、それとも、目の前の脅威に迫られたのかはわからない。ヴィッサリオンに促されて、戦姫は前を見やる。
海の地平線の彼方から、黒い物体が次々と姿を現していく。
ついに始まる機械仕掛の『魔弾』と、一子相伝の『聖剣』が織りなす武勇伝。
『人』が寄りすがる『力』の表裏化『魔』と『聖』
『人』の生み出した『技』の具現化『弾』と『剣』
竜具が選ぶのは『戦姫―ヴァナディース』
竜具が求めるは『勇者―ヴァルブレイヴ』
独立交易都市出身、初代『銀閃の勇者』ヴィッサリオン。ここにつかまつる!
◇◇◇◇◇
オステローデ船団から見える景色は、当然ルヴーシュ、レグニーツァ船団にも同じように見えていた。
左右の瞳が違っていても……『あの船』の『色』は相変わらず……か。
異虹彩色を吉兆と敬うルヴーシュとて、同じような皮肉を感じていた。もっとも、当代の戦姫は異
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