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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
外伝
外伝『魔弾と聖剣〜竜具を介して心に問う』―前章
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ら運ばれる流氷の海。
東には『成層圏』と呼ばれる大気の頂上世界までそびえる山々※2
それらは『文明』の交流を妨げるかのように、何千年も生きたる『自然』によって、立ちふさがれていた。
まるで、『機械文明』を忌み嫌う『自然元素』の袂を分かつ『七つの力学』が、それを望んでいるかのような――
だからなのだろう。ヤーファをはじめとする遠い東の国から、こちら側へ来ることは、物好き以外の人間が来ることなど滅多にない。
それは、ヴィッサリオンが現れてから、それらの『定説(ディオリア)』は『異説(ディシディア)』へ変わる――
生物の生存を許さないといわれていた東の岩山から、なんと堂々とやってきたというのだ。※3

――『黒船』の存在を警告するために、俺はこの地へやってきた――

その言葉は、戦姫を動かすに事足りた。一筋縄とはいかなかったが、右曲余折を得て、周りの配下の妄言など気にも留めず、王に直接進言して。
そして今、ここに『三国同盟』として集い、その盟主としてオステローデ公主が務める次第である。
ヴィッサリオンとの出会いを交わした過去を振り返って、太陽照り付ける紺碧の空を見上げる――

「……『東』からの来訪者……ヴィッサリオン」

意味深く、その名をつぶやいた。
その黒髪の風様から、思わず東方国家、ヤーファかと思っていた。しかし、彼の出自はその島国ではなかったという。

「確か、彼は『独立交易都市(ハウスマン)』からやってきたと言っていた。オステローデの東にある山を越えた先にある『同じ内大陸』だったとはね」

幻想ともとれるそれは、彼の言葉を虚言かと疑っていた。『虚影の幻姫(ツェルヴィーデ)』の二つ名を持つ戦姫に対する嫌味かと思ったくらいだ。四民平等?市民主権?そのような都市国家など聞いたことなどない。
しかし、現実味を帯びたヴィッサリオンの発言は、戦姫の耳をやがて説き伏せていく。彼の生まれ持った親和性もさることながら、何より、『黒船』に対する危機感を、いち早く抱いてほしいという想いが、戦姫への説得を加速させたからに違いあるまい。
そんな過去を振り返りながら、気晴らしに足を運ばせていると、一つの人影を見つける。
それに気づいたのか、ヴィッサリオンはやんわりとほほ笑んで、戦姫に振り向いた。

「いかがなさいました?戦姫様」

その口調は、そよいで撫でる風を思わせるほど、優しいものだ。先ほどの話し相手だった船長と別れたばかりで、ヴィッサリオンは潮騒の風を浴びて涼んでいる最中だった。

「何を……していた?」

猛者ともとれる戦姫が、何か儚げに聞いてくる。すると、ヴィッサリオンは鼻をくんと鳴らす。

「少し、海の風をかぎたくなりましてな。やはりこっちは潮の香りが濃い」

黒目黒髪。左ほほに浅い傷跡の目立つ
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