外伝
外伝『魔弾と聖剣〜竜具を介して心に問う』―前章
[4/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
と、腕たる槍を併せ持つ彼らの突貫力は、古きにわたるその模範であり必勝であり伝統であった。
他にも、箱庭のような大陸の中で各国家の領地が隣り合っていること、船迫の利用方法が交易以外に無かったことから、陸地を戦場とした近接戦闘の原様式は現代にいたるまで変わっていない。
過去の戦の歴史をさかのぼっても、海から侵略者に攻められるという事例などほとんどなかった。その証拠として、大陸に拠点を構える海港は、どこもかしこも防人が手薄である。本当に交易のみを念頭に置いた機構しか存在しない。
島国であるアスヴァールは例外であったが、過去のジスタートは例外ではなかった。
3国の戦姫が合同で軍議中、オステローデ軍船で一人の『客将』がゆったりの窓を除いた。
黒髪の『客将』の隣に、戦姫腹心の船長がいた。
「いよいよ『黒船』のお出ましですか……」
「やはり、ヴィッサリオン殿でも『黒船』はいささか脅威ととらえますかな?」
「確かに、『黒船』以上の脅威は類を見ません。私が最後に見たのは『軍国』の南東港ですが……」
かつての古巣である『東』の地に、思いをはせる。『元』独立交易都市・三番街自衛騎士団所属。ヴィッサリオン。
彼は『代理契約戦争』の世代ではないが、その戦争の爪痕というべきか、黒船に対して強い警戒心を抱いていた。
ちなみに彼のいう『軍国』は、この独立交易都市より南東に位置する港町を指している。
(でも……『丘』を目指すまではあきらめないさ。俺を推挙してくれたハンニバル団長殿の為にも……)
脳裏によみがえるは、禿頭の偉丈夫の上司。『大陸最強』の二つ名を持つ『代理契約戦争』の生き残り。ついでに補足すると、『人間投石器』。出鱈目な異名を複数持つ戦士の名は、ハンニバル=クエイサー。
過去の記憶をさかのぼったところで、ヴィッサリオンはかすかに苦い表情をつくる。無理もない。決して短くない出来事とはいえ、黒船ほど『概念』人を揺るがすものはない。
深紅のほうき星を打ち上げる『首長竜筒砲』。まるで蜂の大軍が如く、鉄の飴玉を絶え間なく吹き付ける『蜂巣砲』。そして、鉄の甲冑を着こなした豪華軍船『黒船』だ。
やがてぎこちなくなったのか、船長は黒船の話題をそらすためにも、ヴィッサリオンの腰に据えられた『得物』に視線を配って助け舟を要請した。
「ところでヴィッサリオン殿。その腰につけてある『カタナ』は見事なものですな。ヤーファのカタナを何度か見たことあります」
「確かに、刀ではありますが……少し違いますね」
「違うのですか?」
「聖剣の刀鍛冶殿が打ち込んでくれた……禍払いの刀である『聖剣』です」
「せい……けん?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ