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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
外伝
外伝『魔弾と聖剣〜竜具を介して心に問う』―前章
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は今回に限ったことではない。過去にその姿を、ジスタートの海域にちらつかせていた。
我々より一段階上を行く戦術理論。我等より一手奥の深い武器兵装。我が国より一歩先を行く『概念』を以って――

(……カヴァクなる敵……ヴィクトール陛下はそうおっしゃられていたな……)

鉄の文明の別呼称に、思わず不愉快な気分になる。
ふいに、両腰に装着(マウント)しているバルグレンに、視線を見やる。熱が伝わる様を考えると、どうもバルグレンもやる気満々みたいだ。

(お前も、本当に人の気持ちを察しないんだね)

やんちゃな人格(パーソナリティ)の意志をもつ竜具に対し、黒髪の戦姫はやや苦笑い気味になる。熱暴走する心配のあるこの子は全く……そう思ってしまう。ただそれは、裏を返せばバルグレンなりの、戦姫への励ましともとらえられる。

「やはり黒船というのは、それほど脅威なのでしょうな。3公国の戦姫様に出兵を強いる位だとすると……」
「戦姫様が倒れたりでもしたら……我らはどうしたらいいか……」

戦う前から先入してしまう、暗い思考が周りを包む。しかし、暗くなった道を照らすかのように、戦姫は告げる。

「そうならないために、他の戦姫にも協力を要請した。……まあ、この私が君たちを置いて倒れる気はないし、死なせるつもりも毛頭ないけどね」

にこりと片方の口角を釣り上げて笑い、堂々と言い張った。堅固な意志と誇りに満ちた自信。力強い言葉に対して、武官たちはなんとも言えない、熱くたぎる気持ちになった。彼らは先代の戦姫、若しくは、他の公国の戦姫にも仕えていたが、彼女ほど気高く高潔らしい戦姫には会ったことがない。一同は思った。目前の主の為ならば、この身を散らせても悔いなどないと――
だが、それをあえて口にしない。これほどの部下想いの戦姫へ、自己犠牲の言葉を口にしてしまえば、彼女は烈火のごとく怒るだろう。
海のように広く、深く、穏やかな母性を持つ戦姫の考えは、彼らには到底つかめるものではなかった。

「戦姫様。到着しました。ルヴーシュ、オステローデの船団です」

間違いない。黄地に煌炎・紫地に雷禍が見えるということは、あれが戦姫の旗艦だろう。
そう部下が告げると、戦姫は海原の線先を見据える。
長い船旅の末、予定通りレグニーツァ船団はオステローデ、ルヴーシュ両船団との合流を果たした。





◇◇◇◇◇





大陸としての長い履歴を顧みると、国家間の争いはもっぱら陸地で行われることが多い。
人間は平面以外の移動を可能とする両足と、繊細かつ豪胆な作業を併立させる両手と、それらを統合する高い知能を有する。
そうした『陸地』での戦いが、古来より重んじられてきた。極端にわかりやすい例が『弓を蔑視するブリューヌの騎兵達』だ。足たる馬
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