美保鎮守府NOW-Side B- PART9
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ビルの屋上。そこに不釣り合いな光景が広がっていた。コンクリートで塗り固められた屋上にうつ伏せで寝転がる少女の姿があったのだ。明るいブラウンの髪はショートに切られ、前髪が垂れてこないようにカチューシャを付けている。服装は白と赤のセーラー服のような格好で、その顔にはオドオドとした自信の無さが浮かんでいる。しかし、そんな彼女の異質さを際立たせているのは傍らに置かれた鉄の塊だ。おおよそその少女が使いこなすような物に見えないそれは、【XM109ペイロード】……一般的にアンチマテリアルライフルと呼ばれる大口径の狙撃銃である。と、彼女のスカートのポケットに入れられたスマホがブルブルと震える。慌てた様子で電話に出る少女。
『どうです?首尾は』
「はっ、はい!やりました」
『流石ですね……では、遠征部隊の娘達に気付かれないように合流してください』
「わ、解りました!じゃあ……私はこれで」
『はい、お帰りをお待ちしてますよ名取さん』
電話を切った長良型3番艦の名取は、ふぅと息を吐き出した。電話の相手は大淀……密かに頼まれた『掃除』をこなした所だった。
ブルネイでの陸軍との一悶着が終わった直後からただならぬ騒動の予感を感じていた大淀は、独自に情報収集を開始。その流れで元帥夫妻が拘束されている事を知る。そこで一計を案じ、たまたま横須賀付近まで遠征に向かっていた名取に連絡を入れたのだ。
名取は、ブルネイ鎮守府No.1のスナイパーである。普段から自信の無い言動とは裏腹に、その影の薄さと射撃の正確さで隠れ潜んでの狙撃が得意だった。しかし、その事実は提督には徹底的に隠されている。政敵も多い金城提督の為の掃除人(スイーパー)として、大淀が切り札として温存している為でもあり、何より名取本人がそれを望んでいた。名取は提督を愛していた……しかし、その引っ込み思案な性格が災いして思いを告げられずに偏愛的に歪んでいく。そんな時に声をかけたのが大淀だった。
『提督のお役に立ちませんか?』
提督本人には気付かれない、しかしそれは間違いなく提督を助ける仕事。そして自分にしか出来ない仕事だと告げられた。名取に迷いなど無かった。そこで狙撃の腕をひた隠しにして、大淀からの指令を受けて動く闇の住人へとなったのだ。
「ふふ……提督さん、喜んでくれるかな…♪」
彼女のその思いは狂気的なまでの強さを持っていたが、自らそれを提督に告げる事はしない。まるで暗がりに自らの中の鬼を隠すかのように。
『大佐』の計画は悪くはなかった。寧ろ、クーデターの計画としてはよく練られていたのだろう。ただ、誤算としては金城提督の力を見誤っていた事、そしてその彼を慕う狂った死神に見つかってしまった事だろう。それさえ無ければ、頭部が粉々に吹き飛ぶなどという惨い
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