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風魔の小次郎 風魔血風録
13部分:第二話 夜叉八将軍その一
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のは事実」
 陽炎が言う。
「前にこの陽炎が相手をして退けたあの十蔵にしろ雷炎にしろ中々のものだった。中々でしかないがな」
「それでです」
 ここで夜叉姫がそこにいる全員に対して声をかけた。
「はっ」
「夜叉姫、何事でしょうか」
「その風魔と白凰学園を倒し若し風魔九忍が出て来るならばそれをも倒し我が誠士館の制覇を確実なものとするこの戦いに」
 それだけのものであるとまずは自身の前に並び片膝をつく彼等に対して述べる。
「指揮官を任命します」
「それでしたら夜叉姫」
 まず顔をあげたのは雷電であった。
「この雷電こそが」
「馬鹿を言え」
 だがそれは黒獅子によって否定された。
「御前はまだ八将軍になって日が浅い。無理な話だ」
「俺には荷が重いというのか」
「そうだ。夜叉姫」
 今度は黒獅子が夜叉姫に対して言う。
「この黒獅子こそが。壬生に代わり奴等を」
「本来ならばこの場合は壬生が指揮官となるのだが」
 紫炎は残念そうに壬生に顔を向けて呟く。
「怪我をしていてはな」
「済まぬ」
 壬生はあらためて彼等に詫びた。
「私がふがいないばかりに」
「攻介。今は身体を休めるのです」
 夜叉姫もまたその壬生をあえて今は出さないのであった。
「その間の指揮官は」
「指揮官は」
「武蔵」
 ここで意外な者の名前が出た。
「貴方が務めなさい」
「わかりました」
「馬鹿なっ」
「何故武蔵がっ!」
 言葉で頷く武蔵と反比例するかのように八将軍達は一斉に驚きの声をあげるのだった。思わず立ち上がる者すらいた。
「生粋の夜叉ではない貴様がどうしてだ」
「例え壬生が負傷しているとはいえ」
「待て、夜叉姫の御前だぞ」
 その彼等に壬生が言った。
「うっ・・・・・・」
「静かにしろ、いいな」
「そ、そうだったな」
「申し訳ありません、姫様」
「わかればいいこと。武蔵のことも」
 夜叉姫は武蔵のことも含めて言うのだった。
「一つ言っておくことがあります」
「はっ」
「何でございましょうか」
「指揮官の言葉は私の言葉」
 夜叉姫は夜叉一族においては絶対の存在である。主家の娘でありそれと共に夜叉一族の頭領であるのだからこれは当然のことであった。
「それを忘れぬように。いいですね」
「わかりました」
「それでは」
 主である夜叉姫にこう言われては彼等も従うしかなかった。しかしそれはあくまでこの場だけのことであった。如何に夜叉姫といえどもであった。

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