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フロンティアを駆け抜けて
融解する鋼の心
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「ガル、ルー!」

 ダイバは震える声で指示を出し、遂に意識を失った。ジェムが一瞬蒼白になるが、ガルーラがちゃんと息はしている事を確認して力強く励ました。さすが子供を守るお母さん、とジェムは思う。

「ラティ……いろいろひどいことして、ごめんね。すぐ治してあげるから……」
「ひゅう、あん」

 大爆発もそうだが、ジェムは毒に侵された時ラティアスを無視して戦おうとした。それを謝り、回復装置に当てる。気の遠くなるような十秒後、元気になったラティアスがジェムとダイバの体を癒す波動を当て、体をひとまず元気にした。倦怠感はあるが、それでも十分だ。

「ありがとうラティ。今日落ち着いたら……いっぱい、ラティの好きなご飯を食べましょうね」
「ひゅああん!」

 ラティアスがジェムの周りをぐるぐる嬉しそうに回る。ダイバのメタグロスもボールを借りて元に戻して、彼の代わりに回復装置に入れてあげた。まだ意識は戻らないが、ラティアスのおかげで表情は落ち着いたし大丈夫だろう。問題は――

「ラティ……お願い、アルカさんを『癒しの波動』で回復させてあげて」
「ひゅううん……?」

 次の階の入り口付近に横たわるアルカ。ボロボロのマントは完全に焼けちぎれ、下に着ている丈の短いワンピースも灰で黒ずんでいた。無理やりまとめていたピンクの髪も、髪留めがちぎれてくせっけの長髪が腰まで流れている。ダイバが目を覚ますのを待つ必要があるとはいえ、ただ上に行って事態を解決するためならアルカは放置しておいた方がいいに決まっている。バトルタワーのルールのおかげでアルカはもうポケモンを出すことは出来ないが、それでも口先でダイバを騙した以上何をしてくるかわからない。ラティアスが心配そうに首を振る。

「大丈夫、私はもうあの時みたいに無茶なんてしないわ。少しでも危なくなったらラティに助けてもらうし、『神秘の守り』もかけてもらう。……駄目かしら?」
 
 ラティアスの首元を抱きしめ、ジェムが頼む。ラティアスの黄色い瞳とオッドアイが見つめ合い、お互いの心を交わした。そしてラティアスは、『神秘の守り』を使いアルカを銀色の波動で包む。

「ありがとう、ラティ。……私って、甘いのかな?」
「ひゅうん」

 にっこりと頷かれた。でも、それがだめだとはラティアスは言わなかった。ジェムはそのことに感謝しながらも、アルカにかけるべき言葉を考える。そして、さっきラティアスにしたように、アルカの自分とほとんど変わらない大きさの体を起こし、目を覚ますまで見守った――
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