融解する鋼の心
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く生きるためにポケモンを使って来たアルカの手持ちとは格が違う。だが仲間のラティアスは『甘い香り』によって反応速度を失い、『神秘の守り』を維持しつつジェムを守るので精いっぱい。そのトレーナーであるジェムは今まともに指示が出せず戦えない以上、メタグロス一匹では守りに徹するアルカのポケモンを倒すことは出来ない。メガシンカをすれば話は別かもしれないが、それをすれば能力を下げられない特性である『クリアボディ』を失い、それすれば数多の毒がメタグロスにも襲い掛かる。
「それはどうかな……僕はジェムみたいに殻をこじ開けるなんて面倒なことはしない。邪魔するやつはこの拳で、殴り倒す! 『バレットパンチ』!」
ドヒドイデの中に隠れるアルカには今の光景を見ることが出来ない。だが鋼の拳が進む音はアルカよりも下、床の中から聞こえた。いくらドヒドイデの防御力が高くとも、下はがら空きだった。三本の拳がドヒドイデのドームの下から床を突き破り、中のアルカとドヒドイデをアッパーで打ち上げる!
「なっ……! ああああああああっ……あ……ぐ……」
容赦なく鋼の拳に晒され、アルカは芋虫の様にのたうち回るしかない。ただの人間が、メタグロスの拳を食らって平然としていられるわけがない。痛みで頭が真っ白になって、呼吸をしているのか息を止めているのかもわからない。それでもダイバを睨みつけ、必死に口を動かす。
「正気、ですか……わたしがもし死んだら、ジェムを戻せないかもしれないのに……」
「心配いらないよ。メタグロスは人が死なない加減を覚えてる。僕の代わりに、ぎりぎりの手加減はしてくれる」
だからこそ、ジェムを殴ったときも意識を失いはしたが骨折などの後に響く事態にはならなかった。逆に言えば、だからこそダイバは他人に容赦なく拳をぶつける。人が死なず、それでいて最大限のダメージを与える緻密すぎる拳を。それはある意味、殺意よりも恐ろしいのかもしれない。コンピュータゲームで敵を殺しても大部分の人間は良心が痛まないことのと同じ、覚悟のない暴力。その意志を感じ取ったアルカは、震える足で立ち上がる。ドラコのドラゴン使いとしての立派なマントとは違う、襤褸切れを集めたようなローブを翻し、ダイバの目線よりも上から言葉をぶつける。
「ふざけないでください……馬鹿にしないでください……わたしが……わたしがどんな気持ちで生きるために他人を傷つけたと……」
「だから、知らないって……大体、平気で僕らを攻撃しといて何言ってるの?」
ジェムの腕に蔦を巻き付けて生気を奪った時も、エンニュートの毒でジェムをおかしくしたときも、『弾ける炎』でこちらを狙った来た時も罪悪感のようなものは一切感じ取れなかった。それで今更どんな気持ちと言われてもダイバは何も思わない。それ
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