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フロンティアを駆け抜けて
融解する鋼の心
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たのだった。

「ふざけるな、こんな無理やりな方法で好かれて嬉しい奴なんていない……」

 言った後、思い出す。どの口が言うのかと。最初ジェムが自分の弱さに打ちのめされているのを見てこのままいけば自分を頼るようになり、チャンピオンの娘より上に立てるとほくそ笑んだのはどこの誰だ。ほんのついさっきまでの自分は、同じようなことをしていたのではなかったか。

「心当たりがあるようですね。男なんてどんな手段でも女が手に入ればいい醜い生き物なのですよ。ましてやあの支配者の息子ならなおさらそうでしょうね……」

 だけど、その言葉はすごく勘に触った。確かにダイバは父親に近づこうとしていたし似たことをしようとしていた。だけど、ドラコと戦った時のジェムの言葉で芽生えたある感情。あの時はただ何となくメタグロスで殴ったことを謝っただけだけど。今父親と同じだという言葉をぶつけられてはっきりと自覚した。

「……違う。僕はパパとは違う。僕も無理やりな方法でジェムを従わせようとした。ついさっきまで利用しようとしてた。でもそれは楽しくなんてなかった! ジェムがさっき僕と一緒に自分の答えを見つけたいって言ってくれた方がずっと嬉しかったんだ! 僕は……パパとは違う!」

 ただチャンピオンの娘より上に立とうとしていた時も。自分の方が強いと主張していた時も、アンティルールでジェムからシンボルを奪うと決めた時も。今日バトルタワーに挑むときに自分の言うことを聞くように命じた時も、どこか心の底からそれを肯定できない自分がいた。やり場のない不満を抱えていた。それがジェムのドラコと戦った時の言葉で、驚くほどすっと消えた。ただ好きだから怖いからとかで従わせるよりも、ずっと気持ちが良かった。

「ホント子供ですね。自分にとって都合のいいことを言われたら簡単に流れて他人をムキになって否定して……」
「なんとでも言いなよ。親の顔も知らない君には僕の心はわからない。僕もお前の心なんかに興味ない。叩き潰して、ジェムを元に戻してもらう」

 軽蔑するようなアルカの言葉を一蹴する。自分はジェムのようにお人よしじゃない。ジェムみたいになりたいとも思わない。ただ、自分の目的のためにもジェムを元に戻ってもらう。ジェムがそのうえでアルカを助けたいというのなら付き合う。それでいいはずだ。

「それは出来ませんね。あなたもジェムも物言わぬ人形になるのですから……リジア、『弾ける炎』!」
「ラティ、『サイコキネシス』」
「ひゅうあん……」

 ジェムはアルカやラティアスに振り向きもせずに、指示を出す。ラティアスは悲しそうだったがそれでも主を守るため念力で炎を弾き飛ばした。が、炎は炸裂しわずかな余波がメタグロスとダイバに覆いかぶさるジェムの背中に当たる。


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