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SAO─戦士達の物語
MR編
百四十七話 それでも尚、望むもの
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ない今の自分は、物と全く変わりはない。

『……あれ?』
何を見ているか認識していないまま天井を見ながら、彼女はふと思った。

『……私、何で生きてるんだろう?』
ずっと、死が怖くて、生に執着してきた。けれど生きながらにして死んでいるのと変わらない今の自分が、どうして今も生にしがみつく理由があるだろう?今の自分が死んでいるのと同じで、死が今の自分と同じなのだとしたら、死の何がそれほど恐ろしいというのだろうか……?
……もしも、「それ」を受け入れれば、黒猫団の皆にも、千陽美にも、会えるのだろうか……?

「…………」
気が付くと、サチは玄関の前に立っていた。何も考えない頭を無視して、身体が自然と目の前のドアノブに手を掛ける。身体が震えているようだったが、それがどこか遠くの事に思えていた。

『あれ?私何してるんだろ……?』
多分外に出ようとしているのだと思う。この二週間、自分から外に出ようとしても、身体がすくんでろくに動けなかったのに、どうしてか今は身体が素直に動いているようだ。ただそれもどちらかというと遠くの事のようで、自分で体を動かしているような気はしないのだが……

「…………」
ドアノブに触れた掌が、かちゃりと小さな音を立ててそれを回し……

「……あ?なんだお前、外出る気になったのか?」
「…………」
扉を開けたそこに、リョウが居た。
気が付くと外は夕暮れになっていて、橙色よりも夜闇が周囲尾包み込み始めている。そんな中ぽかんとした顔で自分を眺めるリョウは、どこか滑稽に見えた。

「?おい、サチ?」
「…………」
「……?おい?」
黙ったままのどこかうつろな瞳で自分を……いや、自分の方を見ているサチを見ながら、リョウは首を傾げる。目の焦点があっていない。こちらを認識していないようなその瞳が、ひどく危ういもののように見えた。

「おい!」
「ッ!?……あ、リョウ、おかえり……?あれ?夜……?」
「……お前……」
「あ、れ……?私……」
どこか混乱したように周囲をキョロキョロと見回して、自分がどこに居るのか確認しようとしている彼女は、まるで道に迷った少女のように頼りなく、しばらくそれを繰り返す。そして……

「私……わた、し……」
ふいにその動作を止めると、今度はカタカタと震え始め、まるで頭痛を起こしたように頭を抑えた。

「わた、わたし……今……い、ま……!」
「お、おい!?」
ガタンッ!と音を立てて、サチがしりもちをついた。腰を抜かしたように、地面にへたり込む彼女に、慌ててリョウが脇にしゃがみ込む。彼女は何かを恐れるように、自分の身体を抱き込んでいた。

「お前、どした……?」
「わかんない……でも、私……今……!」
震えたたどたどしい言葉で、サチが言葉を続ける、しか
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