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SAO─戦士達の物語
MR編
百四十七話 それでも尚、望むもの
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だから……

「……君は死なないよ」
その言葉が口にされた時、彼女は目を見開いていた。

「……どう、して、そんなことが言えるの……?」
「……黒猫団は、今のままでも十分に強いギルドだから。安全マージンも必要数値より多くとってるし、君はあのギルドに居れば安全だよ。俺とテツオが居るんだし、無理に剣士に転向する必要もないんだ」
自分に掛かる負担もあるだろうに、キリトはそう言ってくれた。その言葉ははっきりとした根拠があって、またどうしてか、自分を少しだけ納得させる確信じみた何かがあった。
だから……縋ってしまった。

「……ほんとに?ほんとに私は死なずに済むの?いつか、現実に戻れるの?」
「あぁ……意味は死なない、いつかきっと、このゲームがクリアされる時まで」
「…………」
それ以上、サチは何も言わずただ少しだけキリトの傍によって、その肩に身を預けると、小さく泣いた。

「(ごめんね……ごめんね……)」
心の中で、何度も何度も謝りながら。

────

翌日からサチは、毎晩眠る時、キリトに頼るようになった。

この頃のキリトに詫びなければならなかった理由が、サチには二つある。一つは、自分が自分の安堵感の為にキリトの優しさを利用し、それによってキリトに対して自分の存在が負担になることが分かっているにも関わらず、彼の存在に縋り続けた事。そしてもう一つは、そもそも彼の言葉をこの時点でサチは、信じ切れてはいなかったという事だ。
キリトはその日から眠るとき何時も、自分に「死なない」「いつか現実に戻ることが出来る」と声を掛けてくれた。しかし、サチはずっと、恐らくその言葉が現実になることとして認識できない節があった。サチの認識している「死」とはつまり、彼女自身の「生きる意志」の欠如によってもたらされる未来である、つまりそれは、周囲の人間が強いとか、そう言うことで解決できる問題ではないのだ。何故ならそれは他の誰でもない、自分自身の問題なのだから。
その確信だけはどれだけキリトが声を掛けてくれても、キリトのステータスを偶然知って、彼が自分達と比べても圧倒的に強者であるという事を知った後も、揺らいではくれなかった。

それが分かっていたのに、分かっているにも関わらず、サチはキリトの優しさに甘えるのをやめることが出来なかった。そうすることでしか、もう安堵感を覚える事も、死におびえずに眠ることも出来なくなっていたのだ。
しかし……キリトにそうして甘えている内に、サチにもやがて気が付くことがあった。自分が死んだ後で、この少年が果たしてどうなってしまうのか、ということだ。

自惚れるなと言われてしまうのを覚悟で、しかしそれでも考えてしまう。ここまで世話を焼いてもらった時点で、既に自分は彼と赤の他人というには関わりすぎてしまってい
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