MR編
百四十七話 それでも尚、望むもの
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あった後で気恥ずかしいやら4年もあっていなかったのに覚えていてもらえたことが嬉しいやらで、サチは頬を紅く染めてうつむく。その様子に気が付いたのか付いていないのか、リョウは肩をすくめて行った。
「けど、悪い、プレゼントもケーキもねぇわ。なんなら、なんか今日中に買ってくっか?」
「う、ううん!いいよ、平気」
今日から世話になるのだ、そこまで甘えるわけには行かないと、美幸は首を横に振る。
「……さよか、んじゃま、お休みだな」
「うん……」
そうして、二人は別の部屋へと入っていく。しかしその寸前で、サチが声を上げた。
「あ、あの、やっぱり……!」
「ん……?」
声はしっかり聞こえたらしく、部屋に入りかけていたリョウがこちらに振り向く。
暗闇で見えないことを期待しながら、サチは顔を真っ赤にして言った。
「わ、私の部屋、ベッドが二つあって、ちょっと寂しいの、だから……」
「あ……?」
「……い、一緒に、寝ませんか……?」
「…………」
本当は、キリトが居なくなってからさみしくなってしまった隣を、誰かに埋めてもらいたかっただけかもしれない。ただこの時は夢中で、そう口走っていた。
「……それが誕生日のプレゼントって……お前たまにすげぇ事言うよな」
「……ふぁっ!?」
そうだ、考えてみればこの場合はそれ自体がプレゼントという事になるわけで、つまり事実上自分は彼の束縛を要求していることになり、それってつまり実は凄く重い要求なんじゃないかっていったい私は何を考えて……そんな様々な言葉が頭の中をグルグルと回り、「やっぱりいいです」が口に出かけたその瞬間……
「ま、いいか」
「へ……?」
「んじゃ、お邪魔―」
彼はそう言って、何の抵抗もなく部屋に入っていった。思いがけず要求を受け入れられてしまって、サチは目を白黒させるしかない。
「…………」
とくとくと、心臓が普段より少しだけ早鐘を打っている。ただの緊張や、いつもの恐怖とは少し違う、久しく感じていなかった、暖かい血が体に巡っていく感覚。けれどこの感覚は覚えがある。子供の頃、何度も感じた感覚だ。
「早くしろよ、灯り消すぞ〜」
「う、うん」
けれど、今の自分は、彼は子供ではない。あの頃とは色々な事が違う筈。けれど……
『あぁ、うん、分かってたよね、きっと……』
何度も何度も、思い出していた。いつもいつも、忘れられなかった。きっと別れた日からまた出会った日まで……今日まで、ずっとそうだったのだ。
『私、この人が好きなんだ……』
小さな少女だったあの日抱いた想いは、今も残って、むしろ強い火になって今も胸の内に或る。けれどこの想いを打ち明けるのには、少しだけ時間が必要だ。
せめて自分が彼に寄りかかるだけの子供で無くなるまで、せめて自分が、彼
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