MR編
百四十七話 それでも尚、望むもの
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そんな話するなんて思って無くて……」
どこか自嘲をはらんだその声に、咄嗟に危機感を感じて、アスナは一歩前に踏み出す。その瞬間、ユウキが一歩、後ろに引いた。
「ユウ、キ……?」
「……アスナ、サチ、ごめん……やっぱり、ボク、皆といるのは……ダメだね……」
「待って、そんな事……!」
「そんな事あるよ!」
「ッ……」
普段より、少しだけ語気を強めて返した彼女の言葉に、さりとて押し返されるように、アスナの脚が止まった。涙を浮かべたユウキの瞳が、真っすぐにアスナを見る。
「……ゴメン、でも、ボク、アスナ達に喧嘩してまで、ボク達に付き合ってほしいわけじゃないんだ……後で辛い思いをさせるなら……アスナを泣かせちゃうならボク……やっぱり、アスナとは出会わない方が──」
「…………!」
待って、だめ、その先を言わないで。そう思って踏み出そうとした、その瞬間──
「──違うよ」
「ッ……」
いつの間にか踏み出していたサチが、ユウキの身体をやわらかく抱きしめていた。小さく首を横に振って、彼女は続ける。
「ごめんね……ホントは、こんな話、ユウキに聞かせたくなかった……ユウキに、そう思わせちゃうって分かってたから……でもね?それは違うの……」
「だって……サチは……」
泣きそうな声で、ユウキが何かを言おうとする。しかしそれ以上が声にならないうちに。再びサチが首を振った。
「うん……確かに、凄く辛かったし、悲しかったよ……?死んじゃいたいって思うくらいに……でもね?私、今なら分かるの……それでもやっぱり、みんなと出会えて良かった……出会わなければよかったって思ったことは、私は一度もないんだって」
「…………ッ」
アスナの位置からも、ユウキの位置からも、その瞬間、美幸の表情は見えなかった。けれどきっと、微笑んでいたはずだと、そう断言できる。それほどに、それは慈愛に満ちた声だった。
「みんなとの出会いがあったから、今私は此処に居るの。あの出会いがあったから、沢山の事を学べて、沢山の物を貰えて、沢山の人と今を生きていられる……だからね?ユウキ、私思うの……もし昔の私に戻れて、その時から人生のやり直しが出来るとしても……それでも、私はきっと、また出会いたいって望むんだろうなって……ケイタに、テツに、ササマルに、ダッカ―に、ちよちゃんに……ランにも」
「……姉、ちゃん……?」
「うん……ランも、私に大事なことを教えてくれた人……大事な瞬間を、くれた人だから……」
「…………」
その意味は、今はまだ、ユウキにもアスナにも分からなかった。しかしそれに対してサチが何かを言うことは無く、ただ、こう続けた。
「ユウキにも居るよね?そう言う人……」
「…………!」
サチの肩越しに、こちらを見ていたユウキの視線が、アスナを捕え
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