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SAO─戦士達の物語
MR編
百四十七話 それでも尚、望むもの
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思ってきた。そう思える程度には、あの世界で得た者は大きく、自分にとって大切で、何より優しかったからだ。
しかしきっと、サチにとっては違う。彼女にとってあの世界の記憶は、その殆どが別れと、悲しみと絶望に満ち満ちたもので、それゆえに、彼女は彼に守られ続けながら生きるしかなかったのだ。

そしてアスナはリョウが言った言葉の、その一端を、ようやく察した。

「……リョウがアスナにあんなことを言ったのはね?きっと、この事があったせいだと思うんだ……」
「…………」
「私が一回、友達をなくして、本当にダメになりそうになった時の姿を、リョウは見てたから……だから、ちゃんと心の準備が出来て初めて、ユウキとかかわるべきだって……それが出来ないならいっそ、って……そう、思っちゃったんだと思うの」
「…………う、ん」

『どっちかっつーと、お前とか、美幸だな』
『お前、ちょっと理想論に傾き過ぎるとこがあるからな』
『……覚悟の話だ』
『その覚悟が出来ねーなら、あの嬢ちゃんにこれ以上深入りしとくのはやめとけ』

あの時、リョウはずっと、美幸と明日奈、両方の心配をしていたのだ。だからこそ、あんな風な物言いをしたのだ

『俺はその覚悟を、持っていてほしいと思うだろうな……』
『……それは、どうして?』
『それは……』
そう……

『大事な妹に、傷付いてほしくないからさ』
自分達を、傷つけまいとして。


『リョウみたいに、私は人の死を見ても何も感じないほど、強くない!!!!』


「ッ……!!!」
反射的に自分の口を押えた。

「わ、私……何てこと……」
「……ごめんね、ホントはずっと前に、アスナにも話していればよかった……私が、あの時の事、思い出すのもつらくて、ずっと勇気が出なくて、話せなかった……本当に、ごめんね……」
「そんな……!」
そんなことは無い、悪いのは自分の方だ。友人だのと抜かしておきながら、知らなかった、知ろうともしなかった。いくらでもチャンスはあったのに、彼女達の一番触れてはいけない部分に触れようとしている気がして、それに触れることを恐れて自分は……

「私……」
自責で彼女は自らを焼き焦がす、その時だった。

「……え?」
「…………」
「え?ッ!?」
驚いたように、サチが声を上げた、その方向を見て、更なる衝撃がアスナを襲った。

「……ユウキ……」
「……アスナ、サチ、ごめん、ボク……」
あまりにも悲壮な表情を浮かべる彼女の顔を見て、アスナは自分の失態を悟った。あの時、ユウキは自分達の菓子作りに興味深々の様子だった。あわよくばつまみ食い狙いで、きっと買い物組と分かれて付いてきたのだ。しかしだとしたら……

「ユウキ、全部、聞いてたの……?」
「ゴメン、ボク二人が、
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