二話 隻腕の騎士と剣聖
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でも、俺にはそんな姿が誇らしげに見えてしかたなかった。
……こんな光景をいつか見たことがあるような気がする。あれはいつだっただろうか、曖昧な記憶の中から思い浮かべてもすぐには思い出せず、悩みながらも過去の事を振り返った。
そんな時だった。
彼はやって来た。
真っ赤な布で前身を覆い、それを金属製の鎧で固定した男。その男の立ち振る舞いは騎士、見た目からして騎士と断定できる……が、その騎士は顔を白の包帯でぐるぐる巻きにしていた。
顔は解らない、だが髪の色は分かる。
真っ白、純白の白色だ。
そして士郎はある事に気付く。
────この人……右腕が。
その騎士は隻腕の騎士だった。
右腕が根元からない、そして士郎は新たな疑問を抱く。
隻腕の騎士の左腰に掛けられた弓だ。
片腕でどうやって弓を弾くんだ?
弓は両手を使うもの、それを右腕だけで弾けるとは思えない。士郎の視線は隻腕の騎士の弓に向いていた。
そして男は俺達の隣をすれ違う。
「シロウ、どうしたの?」
エミリアの呼び掛けで俺は我に帰った。
「ぁ……あぁ、」
いつの間にか、あの男の姿は無かった。
……あの男は何者だったのだろう。
胸騒ぎ、あの男の弓……見覚えがある。あれはアーチャーの使っていた『弓』だ。
俺も、以前あの弓を投影し使った事がある。あの騎士の所持していた弓はその弓に似ていた、それと酷似していたんだ。最初は似ている、なんて思ってたけどあれは似てるんじゃない。あれはアーチャーの『弓』だ。
なのに、俺はなんでこんなにも自然なのだろう。
あれは確かにアーチャーの弓だ。
なのに、俺はそれを目の当たりにしたのにも関わらず、それを特に疑問に思うことなくそれを観察していた。
普段通りの俺なら、あの騎士を問い詰めている所なのに……なんで、俺は。
「やっぱり、どこか怪我してる?」
心配そうに見つめてくるエミリア。
「大丈夫、ちょっと考え事してただけだから」
「……ん、それならいいけど」
そう言って俺の手を繋ぎ直し、前へ前へと進んでいく。
アーチャーの弓が頭から離れない。
なら、俺は何故、あの男を追わなかった?
あの騎士本人を追えばその正体も解ったろうに。それでも俺はあの男を追おうとはせず、エミリアと共に居る。今からならまだ間に合う、そうだとしてもやはり俺の足は奴を追おうとはしなかった。
なら、今はいい。
きっとまた会える。
そんな無茶苦茶な思い込みで衛宮 士郎はこの状況から目を背けた。気にならないと言えば嘘になる。だが、今はそんなことさえどうでもいいと思っていた。今はこの一瞬を無駄にしたくない、衛宮 士郎はこの状況を楽しんでいる。
非日常を、非現実を。
聖杯戦争
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