共闘
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《オーグマー》。拡張現実などと称されて発売されたソレは、VRと違って身体を動かすことが可能という一点において、主にフィットネス関係から歓迎された。さらに携帯端末にも勝る利便性もあり、瞬く間に世間に受け入れられると、あっという間に《オーグマー》はトップセラーとなった……不思議なほどに。
さらに不思議なことと問われれば、ベストセラーな商品にはつきものの、売り切れなどという話は全く聞かないところだ。《オーグマー》を求めた客が殺到しているにもかかわらず、未だにどこでも入荷していると、そこまで人気作になると見込んでいたのだろうか。
そんな入手の容易さも手伝ってか、道場の経営と指導をしている父も、機械オンチだが《オーグマー》を購入せざるを得なかった。しかしそこは母が手取り足取り教えており、決して近づいてはいけないオーラが形成されていた。
そしてそんな《オーグマー》の売れ行きに一役買っていたのが、先日レインに紹介されたARゲーム《オーディナル・スケール》だった。拡張現実で行われる新感覚のゲームは、若年層からゲーマーまで多くの層を取り込んでいた。
それはもちろん、自分たちまでも例外ではなく――
「でもまさか、学園側が用意してくれるなんてねー」
机に頬杖をかいているリズがそう呟きながら、耳に装着している《オーグマー》に視線を向ける。このSAO生還者学校に持ち込まれた《オーグマー》は、なんと生徒たち一人一人に配られることとなったのだ。あのデスゲームにおいて二年間をVR環境で過ごした俺たちは、どうしてもVRにおいては特異な存在らしく、こういう実験台を思わせる扱いは珍しくなかったが……今回は、随分と気前がいい。
「くれるってなら病気以外は貰いたいわけだけど、レポート課題まではいらないわよー……」
「ま、まあまあ……キリトくん?」
とはいえ代償に大量のレポート課題を貰った上に、ARを使ってのレポート作成を義務づけられているため、いつものようにALOでするわけにもいかずに。こうして学校に残ってやることとなり、遂にリズが課題の山に突っ伏していた。
「ん……ああ」
「なんかテンション低いですよね、キリトさん。新しいゲームって聞いたら飛び跳ねそうですけど」
「確かにこいつはいいガジェットだとは思うけど……俺はVRの方が好きだな」
「ふーん。ショウキは……聞くまでもないわよね」
「え?」
《オーグマー》を触って苦笑するキリトから、いきなり話題をこちらに突きつけられる。珍しくやる気のないキリトはともかく、他のメンバーよりも俺がこのARゲームに熱中しているのは確かだったが、何かを疑うようにリズはこちらを眺めていた。
「確かに運動はあんたの得意科目だけど、流石に熱中しすぎじゃないのー?
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