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SAO−銀ノ月−
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「……あ、レイン」

「露骨に話題逸らしましたね」

 机の上に投影されたARヴィジョンに映るレインの姿に、課題に取り組んでいたメンバーが動きを止める。数人いるバックダンサーの中の一人という扱いだったが、しっかりとアイドルな雰囲気を醸し出している。

「レインさん、頑張ってるみたいね」

「でも、ユナも可愛いですよねぇ……」

 バックダンサーの中央にいるのは、この《オーグマー》ないしARゲーム《オーディナル・スケール》の専属サポーター、と呼ばれるアイドル《ユナ》。アイドルらしい少女に身を包んだ彼女は、なんと世界初のARアイドルという触れ込みの登場だった。

 つまりモンスターなどと同様に、ARのヴィジョンで創られたモノだというのだが、その表情や動きは――明らかに人間的だった。ALOのNPCでもたどり着けないレベルであり、本当は現実世界の人間なのではないかとまことしやかに囁かれている……レインが以前、「あの子のモーションキャプチャーを」などと口を滑らせたのは、聞かなかったことにするとして。

「シリカったら、随分とユナにご執心じゃない?」

「ご執心ってわけじゃ……ただ、歌は好きだしARかどうかは気になりますし……」

「それをご執心って言うんじゃないのか?」

 そんなシリカの姿に苦笑しながら、机の上でダンスを繰り広げているARアイドル《ユナ》の姿を見る。モーションキャプチャーの話はともかくとして、確かにそのクルクルと回る表情は人間のようにしか思えない。

「そういうショウキさんはどうなんです? ユナについて」

「そうだな……」

 アイドルとしてはリズに勧められた神崎エルザ推しだが、そういうことを聞いているわけではあるまい。人間なのかARの産物なのか、もう一度その表情をじっくりと見た。

「……どっかで見たことないか?」

「ショウキもか?」

 あまりシリカからしたら満足いく回答ではなかったようだが、どこかボーッとしていたキリトから答えが返ってきた。どこかで見覚えのあるユナへの既視感は自分だけではなかったらしく、もう一度記憶を掘り起こそうとするものの――

『皆さん! 使えそうな資料まとめてきました!』

「ありがと。キリトったら、いい娘を持って幸せねぇ」

「あー……ARの数少ない長所だな」

「もう、キリトくんったらそんなこと言って」

 ――ユナの歌が流れている机の中央から、今度はALOでの妖精の姿をしたユイが現れるとともに、視界の端にARについての資料が表示されていく。キリトが言うには現実を仮想世界が侵蝕する拡張現実ならば、ユイも現実に姿を現すことも可能らしい。この《オーグマー》に対するキリトの当たりが強いのは、ユイを現実世界に映すという目標を先に叶え
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