巻ノ八十五 猿飛大介その三
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「もっとな」
「かわすだけでは駄目か」
「飛んで来るものは一つか」
「そうとも限らぬ」
「ではじゃ」
「手裏剣一つはか」
「かわしてじゃ」
そしてというのだ。
「次に備えよ、我等の名も思い出せ」
「猿飛か」
「猿の様に飛ぶじゃな」
「そして動く」
「佐助、猿になれ」
大介は孫にこうも言った、木と木の間を抜け深い森の中を進みながら。
「御主は身体が大きくなった、しかしな」
「それでもじゃな」
「そうじゃ、狒々はどうじゃ」
「猿よりもずっと大きいわ」
「しかし動きは速いな」
山の中でもだ。
「猿と同じ様に動くな」
「だからじゃな」
「御主もそうなれ」
例え身体が大きくとも、というのだ。
「猿の様に、大きくともじゃ」
「狒々の様になり」
「動け、よいな」
「わかった、ではな」
「御主、殿も他の御仁も今以上に強くなる」
「だからか」
「より鍛錬に励め」
こう言ってだ、今度は二枚だった。
大介は木の葉に念を入れた手裏剣を放った、すると猿飛はその二枚共駆けつつかわしたが大介はその孫に今度はこう言った。
「それでよい」
「今のでか」
「一瞬を縮めたな、それにじゃ」
「さらにじゃな」
「動きが先程より短かった」
かわすそれがというのだ。
「一瞬を縮めてじゃ」
「かわす仕草もじゃな」
「短くせよ」
「紙一重か」
「紙一重のその一重よりもじゃ」
「さらにか」
「短くせよ」
そうせよというのだ。
「わかったな」
「一瞬を縮めさらに動きも」
「そうしていけ、わかったな」
「わかった」
「そして草木や石の言葉も聞け」
こうもだ、大介は孫に言った。
「よいな」
「そうしたものの声もか」
「猿や鳥だけではない」
さらにというのだ。
「そうしたものの声も聞いてじゃ」
「そしてか」
「動くのじゃ、潜んでおる時もじゃ」
「その時もか」
「聞くのじゃ」
こうも言ったのだった。
「そうすればさらにわかる」
「色々なことが」
「耳を澄ませ心を静かにせよ」
そうしてというのだ。
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