113部分:第十話 小次郎と姫子その十一
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第十話 小次郎と姫子その十一
「そんな感じですよね。どれもこれも小さく見えて」
「そうそう、姫様もわかってるじゃない」
「こうして見れば本当に」
姫子は優しい微笑みを浮かべつつ述べた。
「私達って小さいんですよね」
「そうだよな。それはな」
小次郎もまた微笑んでいた。その顔で語っていた。
「そうだよな。けれど皆必死に生きているんだよな」
「はい。それで小次郎さん」
「んっ!?」
「今小次郎さんは必死ですよね」
「いや、俺は別に」
小次郎はそれは否定した。照れ臭そうに笑って。
「そんなことは全然ねえけれどな」
「じゃあその手袋を」
小次郎のその言葉を聞いて姫子は。その両手の黒い皮の手袋を見たのだった。そのうえでまた小次郎に対して声をかけてきた。
「脱いで下さい」
「えっ、これをかよ」
「はい。御願いします」
小次郎に対して言う。
「その手袋を。脱いで下さい」
「いや、これは」
しかし小次郎はここで顔を曇らせてしまった。
「ちょっとな。脱ぐわけには」
「知っています。傷だらけですよね」
姫子は知っていたのだった。小次郎の手のことを。そして風林火山のことを。何もかも知っていて、今それを本人に対して告げたのである。
「その手の平は」
「知ってたのかよ」
「前お話してくれましたよね」
「そうだったかな」
「はい、そうです。ですから」
また小次郎に対して言う。
「御願いします。見せて下さい」
「じゃあまあ」
ここまで言われてやっと手袋を脱ぐのだった。そしてその手の平を見せる。マメやタコといったものではなかった。もう散々に破れ。血が滲んで出ていて真っ赤になっていた。
「そんなにまでして・・・・・・」
「これが忍なんだよ」
小次郎は言う。
「何があっても。守らなくちゃいけねえから」
「守る・・・・・・」
「そうさ」
強い言葉と共に頷いてみせてきた。
「俺は姫様を守らなくちゃいけないからな。だからな」
「私を、ですか」
「確かに夜叉の奴等、特に武蔵に勝ちたい」
その気持ちに偽りはなかった。
「けれどそれ以上にな。俺は姫様を守りたいんだ」
「私をですか」
「そうさ。俺は何があっても姫様を守る」
このことをまた姫子に告げたのだった。
「だから。俺はどんなになってもやるぜ」
「小次郎さん」
姫子はここまで聞いて。また小次郎に声をかけてきた。
「どうして私の為にそこまで」
「姫様がいいとこばかりだからな」
「そうなんですか?」
「まず可愛いだろ」
最初に言うのはこのことだった。
「可愛いところに可愛いところに可愛いところに」
「可愛いばかりじゃないですか」
「じゃあ真面目で努力家で優しくて細かいところに気がついて時々頑固で」
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