112部分:第十話 小次郎と姫子その十
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第十話 小次郎と姫子その十
「蘭子さんのお話ですと」
「そうか。時間的にも仕事もかなりのものになってるよな」
「ええ」
「しかも今は誠士館にとって不利だ」
これもまた紛れもない事実であった。
「それでどうしてとんずらこかねえのか。それを考えれば」
「やはり何かあるのですね」
「最後まで戦わないといけない理由がな。ある」
小次郎はそう断言した。
「だからあいつは引かないだよ。だから」
「小次郎さんとも闘うと」
「こっちだって引くつもりはないさ」
ここで小次郎はベンチから立ち上がった。そして前をまた見据える。
「絶対にな」
「絶対にですか」
「ああ、例え姫様に言われても」
言葉の決意が強いものになる。
「こればかりはな」
「そうですか」
「それでだ」
小次郎はまた言ってきた。
「はい?」
「何かさ、暗い話して暗くなったよな」
「ええ、まあ」
「だからだよ。ちょっとな」
「ちょっと?」
「場所変えないかな」
少し笑って姫子に声をかけてきた。
「もう遊園地の中も一通り回ったしさ」
「そうですね。もうすぐ夕方です」
「夕方か。時間的にも丁度いいな」
「丁度いい」
「いい場所知ってるんだ」
くすりと笑って姫子に言ってきた。
「そこに行かねえか?」
「そこ?」
「姫様さえよかったら連れて行くぜ」
また笑顔で姫子に言うのだった。
「そこにな。どうだい?」
「ええ、それじゃあ」
小次郎の今の言葉を受けて姫子は立ち上がった。
「行くぜ。いいな」
「はいって・・・・・・えっ」
何とここで。小次郎は姫子を抱きかかえてきた。突然のことなので何が起こったのかわからない。しかし小次郎はここでまた姫子に言うのだった。
「しっかり掴まってろよ」
「あの、一体」
「だからそこに行くんだよ」
こう姫子に言うだけだった。
「そこにな。いいよな」
「そこにですか」
「飛ぶから。少し」
「飛ぶ・・・・・・」
「じゃあ行くぜ」
姫子を抱きかかえたまま飛んだ。そしてやって来たのは。何と東京タワーの上であった。小次郎は瞬時にそこにまで辿り着いたのである。
「ほら、ここだよ」
「ここですか」
「いい場所だろ、俺東京でここが一番好きなんだよ」
「そうなんですか」
「ああ、何でもよく見えるからな」
夕暮れの赤い光の中で言う。二人は今その赤い世界の中で話をするのだった。
「ここからな。何でもな」
「そうですね。色々なものが見えますね」
「ほら、あそこ」
小次郎はある場所を指差して姫子に言ってきた。
「あそこが白凰学園だよな」
「そうですね、あそこが」
「ここから見れば本当に小さいよな」
「ええ。あんなに大きな学校なのに」
微笑んで小次郎に答え
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