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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十二話 戦場を支配するもの
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負け惜しみだな」
「……」
ワイドボーン大佐がまた笑いました。
「だが、エル・ファシルの奇跡で分かった。俺にはあれは出来ない。士官学校で首席でも戦場で生き残れるとは限らないとね」
「……」
「ごくまれにだが、戦場をコントロール出来る人間がいる。ヤンがそうだな。周囲が不可能と思うことを可能にしてしまう。戦争を自分の思うように動かしてしまうんだ。反則だよな」
「……」
またワイドボーン大佐が笑いました。でも悔しそうには見えません。心底おかしそうです。
「ヴァレンシュタインもそうだ。ヴァンフリートは前半はロボス元帥が指揮を執ったが酷いものだった、ぐだぐださ。後半、ヴァレンシュタインはあの戦いを勝利に持っていった。俺には出来ない、他の奴にも出来ないだろう。ヤン同様、戦場をコントロールできるのさ」
大佐の言っていることは分かります。確かにヴァレンシュタイン大佐は戦場を支配していました。でも、そうなると士官学校の卒業順位って何の意味があるんでしょう。あの順位で配属先も決まるのに……。
「大佐、士官学校を首席で卒業って意味が無いんでしょうか? なんかそんな風に仰っているように聞こえるんですが……」
私の言葉に大佐は今度はクスクス笑いました。
「そうでもない。士官学校を首席で卒業ってのは便利でな。これでも俺は未来の宇宙艦隊司令長官、統合作戦本部長候補と言われている。ヤンやヴァレンシュタインでは無理だな。片方は怠け者だし、もう一人は亡命者だ。あの二人では無理だ」
「はあ」
「だからだ、俺が偉くなってあの二人を引き立ててやる。ピッピとこき使ってやるさ。俺は良い宇宙艦隊司令長官、統合作戦本部長になるぞ。多分同盟軍史上最高の宇宙艦隊司令長官、統合作戦本部長だ。有能な人材を引き立て同盟軍の黄金時代を作り出したとな。どうだ、凄いだろう」
そう言うとワイドボーン大佐は笑い出しました。私もつられて笑いました。やっぱりこの人は変です。でも、この人ならヤン大佐やヴァレンシュタイン大佐を使えるかもしれません。それともいつも頭を抱えて悩んでいるか……。どちらも有りそうです、そう思うとおかしくて笑いが止まりませんでした。
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