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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十二話 戦場を支配するもの
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るのを止めろ」
一転して表情を厳しくしてワイドボーン大佐が言いました。
「別にそんな事は……」
「しているぞ、ヤン」
ワイドボーン大佐にヤン大佐が注意されています。私も思い当たる節はありますからちょっとバツが悪いです。
「奴が作戦案を提示したとき、帝国軍の内情を説明したとき、胡散臭そうな表情をした。奴は味方だろう、それとも敵なのか?」
「いや、味方だよ。そう思っている」
ワイドボーン大佐がこちらを見ました。眼が厳しいです、思わず身体が強張りました。
「ミハマ大尉はどうだ?」
「私も味方だと思っています」
「思っているだけでは駄目だ、奴を受け入れろ!」
「……」
「奴は帝国人だ、帝国の内情に詳しいのは当たり前だろう」
「しかしね、ワイドボーン。彼は少し詳しすぎると思うんだけどね」
ヤン大佐の言うとおりです。何処かヴァレンシュタイン大佐はおかしいです、違和感を感じます。
「それは奴が有能だからだ。それが有るからヴァレンシュタインなんだ。それを認められなければ、何時まで経っても奴を受け入れられんぞ」
「……」
「今日は未だこちらの問いに答えてくれた。作戦案を提示してきた。だがな、このまま疑い続ければ奴はそのうち何も喋らなくなる」
「……」
耳が痛いです、大佐が私達に心を閉ざしたのは何故だったのか……。
「ここ数日、奴は参考書の同じページを繰り返し見ている」
「?」
「あれは勉強などしていない、勉強している振りをしているだけだ。かなり精神的に参っている。早退したのも嫌気がさしたのだろう」
思わずヤン大佐と顔を見合わせました。私は気付かなかった、ヤン大佐も同様でしょう。それなのにワイドボーン大佐は気付いた。私は何処かでヴァレンシュタイン大佐が少しずつ心を開いてくれていると思っていました。勘違いだったのでしょうか……。
「ワイドボーン、君が作戦計画書を持ってきたのは」
「そうだ、奴の気分転換になればと思ったんだ。だがそれも無駄になった、お前らが胡散臭そうに奴を見るからな!」
ワイドボーン大佐が声を荒げました。情けなくてワイドボーン大佐を見る事が出来ません。ヴァレンシュタイン大佐を気付かないうちに追い詰めていました。一体何をしていたのか……。
「ヤン、ヴァンフリートで奴が何故お前を怒ったか、分かっているのか?」
「ミハマ大尉の報告書を読んだのか……」
「ああ、読んだ。バグダッシュ中佐からも色々と聞いている」
ヤン大佐が溜息を吐きました。
「彼が私を怒ったのは第五艦隊が一時間遅れたからだ。私の説得が不調に終わった……」
「違うな、そんな事じゃない。奴が怒ったのはお前が奴の信頼を裏切ったからだ」
ヤン大佐の顔が強張りました。
「奴はお前が自分を疑っている事を
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