暁 〜小説投稿サイト〜
殺人鬼inIS学園
第二十二話:帰還
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
息を吐いた。

「ISを纏っているからか随分と余裕だな。総てのイニシアチブを握っていると確信しているような声色だ」

 楯無の眉が訝しげに顰められる。

「先生、いくらなんでも無謀すぎない?」

「残心を忘れてるな、だから足元を掬われる」

 次の瞬間、楯無が持っていたブレードは彼女の手を離れ、宙を舞っていた。

「え?」

 ISのパワーアシストの手を離れたブレードは、バトンのように美しい軌跡を描きながら夜空を踊る。次の瞬間に見えたのはアーミーブーツのゴツゴツとした靴底。ありえない光景だった。生身の人間であるラシャが、あろうことかISのブレードを蹴り飛ばしていたのだ。

「まだまだだな、そんなじゃあブリュンヒルデには程遠い」

 ニヤリと笑うラシャに対して、楯無の表情は青かった。ISのハイパーセンサーを以ってしても見切ることが出来ない一撃だったからだ。いや、それ以前に自らに多少の油断が生じていたことは認めるとしても、ISによるパワーアシストは生身の常人においそれとどうこうできるほどやわに出来ていないのだ。
 だが、ラシャはそれを破った。決して弱くない力で握っていたにも関わらず、彼は初めて出会った時のように彼女の得物を叩き落とし、彼女の慢心をへし折ったのだ。ヘリポートに突き刺さったブレードに映った月の光が悲しくなるほど美しかった。
 尚、不敵な笑みを浮かべた直後、ラシャは警備員にカービン銃でぶん殴られて意識を失い連行された事は言うまでもない。



「さて、貴方らしからぬ結果になりましたね。更識くんから全ては聞いています。篠ノ之姉妹との邂逅の妨害は失敗。置き土産は世界にとって手に余る第四世代IS……。各国から問い合わせが殺到して来るのは明確、明日から忙しくなるでしょうねえ、全く」

 学園長執務室にて、轡木十蔵学園長はヘリポートで一騒動起こした用務員と言う名の専属ヒットマンであるラシャを睨みつけた。拘束から1時間が経過しており、既に彼に対する拘束は解けている。

「忙しくなるついでに、あの血液の鑑定をして頂きたい。あれの結果如何によって、これからの計画を修正しなければならないんだ」

 十蔵の睨みを跳ね返すようにラシャも睨みを走らせる。いかなる修羅場を潜ったか、ふてぶてしい態度が少しばかり見えた。

「既に鑑定結果は出ています。ラウラ・ボーデヴィッヒのDNA情報と合致していました。しかし、なぜ?彼女は……」

 訝しむ表情を見せる十蔵。事実、ラウラ・ボーデヴィッヒは眼前の用務員の手によって息の根を止められているのだ。しかし、種明かしは本人の口から齎された。

「奴の姉妹が篠ノ之束に飼われ、此度の任務を妨害してきた」

 その言葉に、十蔵は書類から顔を上げてラシャを見つめる。


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ