108部分:第十話 小次郎と姫子その六
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第十話 小次郎と姫子その六
「何でもねえ。気にするな」
「そうか」
「それよりもだ。やっぱり正面から俺を出して行くしかねえか」
「ああ。相手が誰かわからないが頑張れ」
まさかその相手が自分の主君だとは夢にも思わない。若しそうだとわかっていればおそらく小次郎を半殺しにしていたであろう。小次郎は運がよかった。
「応援するぞ」
「悪いな。じゃあ」
こうして小次郎は姫子とのデートに向かうことになった。その週の金曜日。学園では相変わらず部活の練習が盛んに行われていた。応援団もまた然りだった。
庭で並び掛け声や太鼓の音と共に激しく身体を動かしている。ボタンの多い長ランを着て応援団そのものの姿で練習に当たっていた。その指揮を執るのは口髭の男だった。
「いいか!」
彼は団員達に対して告げていた。その横では団旗が誇らしげに高々と掲げられている。
「勢いは今我等にある!学友達の支えとなる為に我等も励むぞ!」
「オス!」
団員達は強い声と共に応える。そこに蘭子がやって来た。セーラー服の上に黒いコートを歯羽織って颯爽とした姿でやって来たのであった。
「これは指南役」
「応援団の練習も順調なようだな」
蘭子は団長に対して声をかけてきた。その顔は真剣そのものだ。
「気力が充実している。いい感じだ」
「有り難うございます」
「やはり女子サッカー部及び野球部の勝利からの一連の勝利が大きいな」
「はい、既に我々はかつての栄光を取り戻しております」
団長は強い声で蘭子に答えた。
「常勝白凰、それが戻り応援する我々の身も引き締まります」
「それは結構。しかしだ」
蘭子はここで団員達を見据えつつあえて厳しい言葉を選んだ。
「だからといって油断するな」
「はい、それは勿論」
「スポーツも武道も終わりはないからな。絶えず精進を続けてくれ、いいな」
「わかりました」
蘭子に対して一礼して述べる。蘭子はそれを受けつつ颯爽とした感じで団員達を見続けていた。団長はそんな彼女を見つつ呟くのだった。
「いつもながら凛々しい」
蘭子のその横顔を見つつ呟いていた。
「流石は柳生様だ」
そう呟いていたところで。竜魔がやって来た。
「むっ、君は確か」
「転校生の風魔竜魔だ」
白凰でそうなっている身元を団長に対して告げる竜魔だった。
「兄弟達共々何かと世話になっているな」
「いや、世話になっているのはこちらだ」
団長は少し謙遜した感じで竜魔に答えた。
「一連の勝利は君達のおかげだ」
「そうか」
「特に小次郎君には感謝している。怪我から回復して何よりだ」
「その言葉は小次郎自身に伝えるべきだと思うが」
「いや、そう思うのだが」
団長はここでその男らしい顔を少し曇らせた。
「指南役が言われるのでな。
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