美保鎮守府NOW-Side B- PART5
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じ、クーデターを企てていたという事か。
「落ち着けぃ、三笠。武力によるクーデターは成功した試しが無かろう?」
日本の軍人によるクーデターとして有名な物と言えば、二・二六事件と五・一五事件だろう。どちらも軍人による政変を目的としたクーデターだったが、どちらも失敗に終わっている。
「そう、武力のみでは上手くいかない可能性がありました。ですが……」
「私がバックに付けば、その問題も解決という訳だ」
杖を突きながら現れた壮年の男。それは今現在内閣の官房長官の座に座る老獪な政治家であった。
現在の総理大臣は若く、リーダーシップが強い。しかし政治の世界はそれだけではやっていけないのが常。その為、与党が長年議員を務めて大物フィクサーとされているこの男を官房長官に据えて、内閣の安定を図っているのだ。
「しかし、私も歳でね。そろそろ一度も座った事の無い総理の椅子というヤツの座り心地を試してみたくなったのだよ」
「成る程、海軍の頭をすげ替えさせて総理にはその責任を取らせて辞任に追い込む……か。良くできたシナリオじゃな」
元帥は素直にそう敵の筋書きを評した。恐らくは陸軍の方にも何かしらのメリットがあるからこそ協力しているのだろう。敵が用意周到であり、こちらが準備を怠った。完全に慢心した結果の敗北だろう。
「貴方にはちゃんと花道を用意してありますよ。ただ、貴方の逆転の目を潰してからその舞台には上がって頂きますが」
愉悦に満たされた表情で、元帥に言い放った『大佐』。
「何の事じゃ?」
「解りませんか?貴方の『飛車』と『角行』を潰すと言っているのですよ」
「夜が明ければは私の手引きで金城提督の更迭が発表される。更には在日米軍にも根回し済みだ」
自信満々に言い放った官房長官。その口調には既に詰みだからどうする事も出来まい?という意思が滲んでいる。
「ふ、ふふ……ふはははははははっ!」
突然肩を揺らして笑い出す元帥。気でも狂ったかと狼狽える『大佐』達。しかしよく見ると、三笠の肩が小刻みに震えている。まるで笑いを堪えているかのように。
「何が可笑しいっ!?」
「いや、笑わせて貰った。いつからあ奴が儂の手駒じゃと?」
「何だと!?金城提督と言えば、貴様の懐刀も当然だろうに!」
「ふん、熊や狼のような獣(けもの)ならば飼い慣らせもしよう。しかし、奴は獣(けだもの)……あるいは化け物の類いかも知れん、のぅ?三笠よ」
「あぁ、そうだな……お前達は踏んではいけない虎の尾を踏んだ。たっぷりと後悔するがいいさ」
まるでこれで万事解決した、とでも言うように言い放つ2人。しかしそれは、他の人間には別の意味に伝わったようだ。
「えぇい、負け惜しみを!」
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