第7章 聖戦
第165話 虐殺の夜
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星上ではない宇宙空間で問題なく生きて行けると言う事は、絶対零度に近い温度に晒されても平気で、更に穴と言う穴から跳び出そうとする目の玉や内臓、血液その他諸々を身体の中に無理矢理に留めて置く事が出来る、そう言う事なのだから。
「トリステインの送り込んだアルビオン懲罰軍六万の内、唯一、生き残っている事が確認されたのは現トリステイン女王のルイズ・フランソワーズただ一人。その他、ほとんどの兵たちは行方不明扱いさ」
イザベラの普通に考えるのなら絶対に信用出来ない説明。何故ならば通常、兵の三割が死傷すればその軍は全滅とみなされる……と言う常識がある。
但し、それは飽くまでも死者と負傷者の数を合わせた数字であって、俺が見ている映像内のトリステイン軍のように純然たる死者の数の事を言っている訳ではない。
普通は其処までの被害を受ける前に撤退が出来るから。幾らなんでも、死にもの狂いで逃げようとする兵を無理矢理に包囲の内側に置いて攻撃を続けるような軍は存在しないし、そのような事を仮に行ったとしても自軍の損害が増して行くばかりで、益があまりないから。
そう考えている最中も続く映像。既に、大方の艦艇は破壊され、魔法を持たない一般人はすべて上空三千メートル以上の場所から地上に向けて落下。そして、残った魔法使いたちも、有る者は腕を食いちぎられ、またある者は首を失い、空中に放り出された兵の身体に次々と襲いかかるバイアキーたち。
そして、時折聞こえて来る上空へと消えて行く恐ろしげな悲鳴は、おそらくイタクァに因って遙か彼方へと連れ去られた人たちの発する断末魔の悲鳴。
約一カ月前に意気揚々とラ・ロシェールの港を飛び立った六万の兵を要する無敵艦隊が、たった一度の敗戦で壊滅させられる様をまざまざと見せつけられる。
戦場が苛烈過ぎる。これではトリステイン……いや、こう言い直すべきか。人間では打つ手がない。そう考える俺。魔法を使うしか上空に滞空する事の出来ない人間に対して、空中を自在に翔ける事の出来るイタクァやバイアキー。これでは最初から勝負になる訳がない。
まして、ハルケギニアの魔法はひとつを発動させれば、別の魔法を同時に使用出来ない魔法ばかり。俺の使用する仙術のように、一度唱えたら効果時間内はずっと効果が維持される……と言うタイプの術ではない。
これでは飛空船を破壊されれば、自らの落下を防ぐために飛行の術式を行使するしか方法がなく、イタクァやバイアキーの餌食となるばかりで、戦う事さえ出来ない状態に追い込まれるのは間違いない。
「成るほど、大体のトコロは理解出来たよ」
くっつけて居た額を離し、それでも息が掛かるぐらいの距離にある作り物めいた美貌に対して、最初にありがとうと言った後にそう続けた俺。
自分を魅力的に見せる事に一切の拘りを
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