106部分:第十話 小次郎と姫子その四
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第十話 小次郎と姫子その四
「相談できる人がいねえんだよ」
「それで私のところに来たの?」
「まあそうなるかな」
それを認める小次郎だった。
「で、どうすりゃいいんだ?」
「焦らないことね」
まず言うのはそこだった。
「まずはそれよ」
「焦らないか」
「それで堂々としていること」
次に言うのはこれだった。
「堂々としていない男なんて誰も振り向かないわよ」
「そんなものか」
「わからないならわからないで堂々としている」
絵里奈が言うのはそれだった。
「どうせ小次郎が馬鹿なのは皆わかってるんだし」
「絵里奈まで俺を馬鹿だって言うのかよ」
「馬鹿は悪いことじゃないわ」
しかし絵里奈はこうも言い加える。
「それよりも自分らしくあることよ」
「俺らしくかよ」
「そう、小次郎らしくね」
ここを強調してきた。
「わかったわね。それで」
「ああ、わかった」
小次郎も絵里奈のその言葉に頷いてみせた。
「そうさせてもらうぜ。読むより動けか」
「そういうことよ。それでね」
「今度は何だ?」
「教えてあげたんだから御礼が欲しいわ」
正面を見つつ小次郎に言ってきた。
「御礼!?」
「そうよ。デートね」
「ああ」
「今度は私とデートして」
こう言うのだった。
「私とね。いいわね」
「絵里奈とかよ」
「今じゃないわ」
これは事前に断ってきた。
「私が大人になってから」
「絵里奈が大人になってからか」
「そういうこと。いいわね」
「ああ、わかった」
小次郎もこのことを快諾するのだった。
「絵里奈が大人になってからだよな。わかったぜ」
「約束よ」
絵里奈はここで小次郎に顔を向けて告げるのだった。
「指きりげんまんよ」
「ああ、それじゃあ」
二人は同時に手を出してきた。それと共に小指も。
そのそれぞれの小指を絡み合わせて。それで言い合うのだった。
「指きりげんまん」
「嘘ついたら針千本飲ます」
「わかったぜ」
こうして小次郎はそのままの自分で姫子とのデートに向かうことになった。それを決めて柳生屋敷に帰ると。
蘭子は己の部屋で机に向かっていた。だがどうにも様子がおかしかった。
「あれ、蘭子は?」
「うん、ちょっと様子がおかしいんだ」
廊下で日課の稽古も早々に切り上げて己の部屋に入ってしまった蘭子を見て小次郎は麗羅に尋ねた。するとこんな返事が返って来たのだった。二人は今庭先の廊下で話をしている。
「おかしい!?」
「うん、何か学校から帰られても思い詰めた顔で」
こう述べるのだった。
「それで部屋に閉じ篭もって。御飯だって」
「あいつ料理上手だろ」
「それがね。凄いことになったんだ」
だが麗羅はここで怪訝な顔になるのだった
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