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真田十勇士
巻ノ八十四 高野山その十二
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「ほれ、その大内家じゃが」
「うむ、滅んだな」
「家臣の陶殿に背かれてな」
「それでご当主殿が腹を切られてな」
「後はただおるだけになった」
「そして毛利家に滅ぼされたな」
「陶殿の謀反が起こる少し前に大内家を去ってな」
 そしてというのだ。
「伊予の山奥で忍の術を使って魚や山菜や獣を取って暮らしておったが」
「その祖父殿が何故来られた」
「気になるのう」
「一体何であろうな」
「我等も気になる」
「全くじゃ」 
 猿飛自身も言う。
「またどうして伊予から出て来たのであろう」
「只孫に会いに来られたのではあるまい」
 幸村は袖の中で腕を組んだうえで言った。
「やはりな」
「それはそうですな」
「まずそれはないですな」
「それでわざわざ伊予からこの山に来られるなぞ」
「考えられませぬな」
「さて、何であろうか」
 幸村もわからなかった、このことは。
「そのことはお会いすればわかるな」
「流石に幕府から何か言われたことはないと思いますが」
 考えつつだ、猿飛は幸村に述べた。
「しかしです」
「それでもじゃな」
「はい、やはり気になります」
「そうじゃな」
「祖父殿も九十になりますし」
「ほう、九十か」
「そうなります、まだ歩けることすらです」 
 このことだけでもというのだ。
「それがしも信じられませぬ」
「そうであるな」
「しかしです、殿が会われると言われるなら」
「御主もじゃな」
「はい」
 幸村に淀みのない声で答えた。
「さすれば」
「さて、どういった御仁であろうか」
 幸村はここで微笑んでこんなことも言った。
「佐助の祖父殿はな」
「はい、拙者も二十年は会っていませんし」
「それ位か」
「もっと言うと二十数年でしょうか」
 細かい歳月は猿飛自身わからなかった。
「二十二年か三年か」
「それ位か」
「何しろ伊予から出て数年はあちこちを旅していましたので」
 所謂武者修行を行っていたのだ。
「それ位は会っておりませぬ」
「二十二年か三年か」
「それ位です」
「ふむ、伊予から出て拙者と会ったのは一年か二年か」
「それ位でしょうか」
「わかった、何はともあれ二十年以上じゃな」
「会っておりませんでした」
 その祖父と、というのだ。
「実は生きてるか死んでるかも」
「今までか」
「わかりませんでした」
 そうしたことだったというのだ。
「いや、恥ずかしながら」
「もう伊予に戻るつもりはなかったか」
「これといって」
 これもまた実際にという返事だった。
「左様でした」
「拙者と共にか」
「まさに死ぬ時と場所は同じと思っていましたので」
 だからだというのだ。
「祖父殿にもです」
「お会いすることはか」
「考えていま
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