第二十一話:敗走
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重い。傷口は既に血液が凝固していたが、その固まった血が傷口を突き刺して激痛を発していた。激痛と戦いながらもどうにか回収地点にたどり着いた時には、既に夜の帳が下りきっていた。
そこには一人の少女が立っていた。IS学園の制服に目の覚めるような青い髪。そして、自身に満ちた表情を覆い隠す扇子。IS学園生徒会長、更識楯無がそこに居た。
「お疲れ様、先生」
「どうして此処に?」
ラシャの脳裏に最悪の展開が浮かんだ。これ以上無い無様を晒した鉄砲玉を始末しに彼女は使わされたのではないか、と。
だが、態々用務員一人を殺すのにISを──しかも国家代表という次代のブリュンヒルデの座を争う為に存在する最高の持ち駒を使うということも解せなかった。
しかし、彼女は若くとも暗部の総帥を継いだ女。ましてや極々短い期間ながらもラシャ自らが指導を行った存在でもある。自らの手を安全に知っている事もあり、殺し屋に選ばれたのではないかと邪推する事もできる。
気が付けば、ラシャの周りを水の壁が覆い尽くしていた。すぐさま身構えようにも、ラシャの身体は身動きができない手足を動かそうにも、水中にいるかのようにその動きは緩慢としたものとなる。
「大人しくしてくださいね?」
楯無はウィンクをすると、水の壁によって陸の上で溺れかけているラシャの顔に、酸素吸入器のマスクを装着させた。ラシャは慌てて口元を抑え、脳に酸素を送る。
「とりあえず、先生がこんな事をしているのかは学園でたっぷり聞かせてもらえますからね?」
楯無は、嫌に凄みのある笑顔を浮かべると、所持しているISを展開した。彼女のためにロシアが誂えた専用機ではなく、IS学園に備え付けてある打鉄であった。
「ナノマシンのベッドで少し休んでいてくださいね。唯でさえ死にかけなんですから」
最早水牢、水棺と言うべき空間に閉じ込められているラシャを一瞥すると、楯無はIS学園に向かって空を蹴った。
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