第二十一話:敗走
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唐突に行われた死の絨毯爆撃は、此処一帯の地図を書き換えんとばかりの激しさで、生きとし生けるもの全てを否定する残酷の煌めきを撒き散らしていた。
「おおおおおおおおおおぉぉぉぉ!?」
哀れなことに、ラシャの身体は木の葉のごとく宙に舞い、再び重力無き世界へ投げ出され、地面へと叩きつけられてしまった。そんな中、クロエ・クロニクルはナイフの拘束から何とか逃れ、暴風の中へと消えていった。
「しまった!!」
ラシャは直ぐ様右手に仕込んだナイフをクロエに向けて放とうとしたが、一度彼女の血と脂を吸ってしまった為か、刃はベルトに嵌ったまま発射されなかった。
それどころか、白銀のISが彼女を庇うようにラシャの前に立ちふさがった。その巨大な両腕でラシャの身体をキャッチし、圧殺すべく握力を掛けてくる。自由落下する彼は放っておいても死ぬというのに意地でも殺すつもりで居るらしい。
その時、腕を通じてラシャの頭に声が響いてきた。
─助けて、彼女を助けて!!
幼子のような懇願する声。周囲には何も居ない。明らかに眼前のISから聞こえてくるとしか思えなかった。
「寧ろ俺が助けてほしいよ……」
ISには不可解なことが多く、人格を持つ様に自己進化をする個体があると聞いていたが、こんなイカれた言動をするようになるのであれば、一刻も早く全て廃棄すべきだ。と、ラシャは痛感した。
「うおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!」
裂帛の気合が黄昏の空に響く。同時にラシャの拘束が解ける。二転三転する視界で、ラシャが辛うじて視界に収めたのは純白のISを駆る弟分の姿だった。周囲には彼の友人である専用機持ちの面々が見えた。専用機を纏った篠ノ之箒の姿もそこに居た。昼間に見た慢心した表情は幾分か鳴りを潜めたようだ。
「大丈夫ですか!?」
宙空に投げ出されたラシャを受け止める存在が居た。所々亀裂が走った橙色の装甲は専用機の作り。巨大な盾のようなものの残骸を携えたシャルロット・デュノアだった。
「今すぐ安全なところへ……ヒッ!?」
シャルロットと目が合った。バラクラバを被っていたとはいえ、体格と瞳の色等で自らが編田羅赦を抱えている事に気付いていたのだろう。表情が瞬時に凍りつく。
「ありがとう」
「え?」
ラシャの常識的な返答にシャルロットの凍りついた表情が困惑に歪む。
「ここからは一人で行ける」
ある程度高度を下げたシャルロットの手からラシャは砂浜へと飛び降りた。彼方の空ではまだ一夏達が戦っている。自分ができることは最早無いに等しい。そもそも篠ノ之箒と篠ノ之束の邂逅を避けられなかった時点で自らの任務は失敗していたのだ。おまけに学園の生徒に存在を知られたりと踏んだり蹴ったりだ。
一歩一歩がとても
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