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殺人鬼inIS学園
第二十一話:敗走
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いというなんとも珍妙な膠着状態が生まれた。少女は顔面蒼白になりながらも、閉じられた瞳を目いっぱいに開く。漆黒と黄金に彩られた異形の双眸がラシャを射抜く。
 ──これが決まれば形成は逆転する。 少女は勝ちを確信していた。

「その手は食わんぞ」

 その呟きとともに、少女の顔面に生暖かい液体が勢い良く直撃した。ラシャが彼女の顔面に自らの血を吹き付けたのである。

「あああああああああぁぁぁぁぁ!!?」

それは彼女の眼球に衝撃を与え、悶絶するほどの痛みを感じていた。当然、視界の喪失とともに張り詰めていた力が行き場を失って僅かに緩む。

「そう喜ぶな、この痛みはまだ前座だぜ」

 ラシャは少女の混乱に乗じて右手をカービン銃から放していた。その手の行き先は少女の左脚。深々と突き刺さった短剣である。ラシャは無慈悲にも短剣を胸ぐらをつかむように捻り上げたのだ。その激痛、推して知るべし。

「あぃぃがぁぁぁぁ!!??」

「どうした?ラウラ・ボーデヴィッヒは呼ばないのか?それとも呼んでも役に立たないから呼ぶことが選択肢に入ってないのか?」

 カービン銃を投げ捨て、痛みに悶える少女の顔を両手でガッチリとホールドしたままラシャが語りかける。対する少女は何とか眼の焦点を合わせると、彼の世界を崩そうとする。

「いや、その手は食わないから」

 ラシャはそのまま少女の顔面に膝蹴りを叩き込んだ。野戦服のズボンに縫い込まれた膝のプロテクターが彼のサディスティックな激情を彩る。少女の鼻と頭蓋が折れまい砕けまいと、必死に悲鳴を上げる。

「さてと、お前には話してほしい事が沢山有るんだ。IS学園まで来てくれるかな?」

地面に仕込み杖を落としてぐったりとした少女に対し、ラシャは軽く挨拶をするように話しかけた。対する少女はどうにか震える左手を動かすと、これ見よがしにラシャへ中指を立ててみせた。明らかな拒絶にして侮蔑である。ラシャの顔筋がピクリと痙攣する。

「……ほぉ、丁重に扱えと言いたいのかな?」

 その時、少女の右手がラシャのホルスターからサバイバルナイフを掠め取っていた。ラシャに対して中指を立ててみせたのは彼の意識を反らせるため。
 一呼吸でホルスターに手を伸ばし、もう一呼吸でナイフを抜き去った。そして一気に喉へ向けてナイフを突き出し──弾かれた。ラシャの左袖から顔を覗かせている仕込み刃によって。

「ぁ……」

「惜しかったな、お嬢ちゃん。あと少しで逆転だったのにな」

 ラシャはそのまま少女の右腕を左脇に挟むと、腕を絡めて一気にへし折ってしまった。

「うぐあああぁぁぁ!!」

 少女は明らかな絶望の表情を浮かべていた。思えば何処かに慢心があったかもしれない。自らの先達的存在とはいえ所詮は失敗
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