10部分:第一話 小次郎出陣その十
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観客席もスタンドも笑顔になる。試合の流れを決めるような貴重な一点なのは間違いない。
だがこれは誠士館にとっては痛い一点だ。応援団も観客席も重い沈黙に包まれた。その中で壬生と武蔵は剣呑な顔をしていた。
「風魔だな」
「間違いない」
二人は言い合う。
「では行くか」
「そうだな」
武蔵は壬生の言葉に頷いた。そして観客席から離れて何処かへと向かうのだった。
そして小次郎も。点が入ったのを見届けてから蘭子に対して告げるのだった。
「ちょっと行ってくるぜ」
「何処へだ?」
「トイレだよ」
「木刀を持ってか」
小次郎の手に木刀があるのを言う。だが顔も目もグラウンドに向けている。
「随分と変わったトイレだな」
「すぐに戻るぜ」
それでも小次郎は言うのだった。
「それでいいよな」
「ああ。しかしだ」
「しかし?」
「油断するな」
こう小次郎に忠告した。
「あの三人とは比較にならない程手強いぞ」
「へっ、相手が誰でも平気だぜ」
小次郎は強気に言葉を返した。顔も自信に満ちた笑みが浮かんでいる。
「この俺様がいる限りな」
最後にこう言ってグラウンドを後にする。小次郎が向かうのは球場の駐車場だった。
そこは屋内にあった。その為日差しが差し込まず暗いものがある。だが今は夜の暗さではなく青い世界だ。青い暗さがアスファルトも天井も壁も彩っていたのだ。小次郎はその中を一人進んでいた。すると前から二人の男がやって来た。
「まずは褒めておこう」
長髪の男が最初に小次郎に言ってきた。言葉と共にその足を止める。しかし小次郎は木刀を右手に担いだまま足を止めない。歩き続けている。
「私は夜叉一族の中でも手裏剣に関しては随一なのだがな」
「へっ、俺だって風魔の中じゃ手裏剣は上手い方なんだぜ」
小次郎は不敵にその男に言い返す。
「まあそっちも上手い方だけれどな」
「お互いというわけか。さて」
ここで男はその手に持つ木刀を構えてきた。中段であった。
「まずは名乗ろう。私は壬生攻介」
「風魔の小次郎」
名乗りと共に足を止めた。そのうえで構えに入った。
木刀を下に向けている。壬生の中段に対するように。
「行くぜ」
「私の名は聞いているな」
壬生は小次郎に対して問う。
「夜叉一族の中において」
「随一の剣の使い手だってな」
壬生に言い返した。
「総帥の兄ちゃんから聞いたぜ」
「なら話は早い。では・・・・・・」
「ああ」
「参る!」
「一つ言っておく」
ここで武蔵が小次郎に対して言ってきた。
「んっ!?おめえは」
「飛鳥武蔵」
今度は彼が名乗った。
「俺は今は闘わない。ただ闘いを見届けさせてもらう」
「立会人ってわけかよ」
「そういうことだ。そしてだ」
「何だよ、
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