甘美なる毒、閉じた心の殻
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想像したくない。でも事実から目を逸らすことはしたくなかった。それがアルカの本気だからこそ、ジェムは真剣に向き合いたい。
「アルカさんは……私たちを殺すつもりなの?」
「この場で命までは取りませんよ。殺したら利用価値がなくなりますからね。生きたまま動けなくしてフロンティアのオーナーとチャンピオンに突き付ける必要があるですから。……ま、それが終われば知りませんけど」
「本気で、言ってるのよね」
「当然なのです、何故わたしがそれを躊躇う必要があるのです? 相変わらず甘えたことばかり言いますね」
アルカからすればそジェムが自分の身を差し出してでも助けようとしたときの拒絶が、ジェムへの印象の全てなのかもしれない。最初にファンだと言ってきたこと自体、ジェムを油断させるための甘言に過ぎなかったかもしれなかった。ジェムは言い返すことが出来ない。
「随分とジェムを気にしてるみたいだけど、僕はジェムやお前の出してる匂いみたいに甘くないよ。……『コメットパンチ』」
ダイバはメタグロスに乗ったまま指示を出す。降りれば即座に蔦で狙われると判断してだろう。メタグロスは鉄の拳を電磁力で操り、彗星のように上からドヒドイデに向かって振り下ろした。
「……いや、別に気にしてませんから。プランチ、『トーチカ』」
殻の周囲が濃紫色のバリアーに包まれる。彗星の拳を弾き飛ばし、殻には傷一つつかなかった。プランチ、というのがドヒドイデのニックネームらしい。
「ジェム、絶対にラティアスから降りないで。ラティアスもジェムが毒になったり直接攻撃されたときに守れるように注意しておいて、勝手に危ないことしだしたらそれこそサイコキネシスで縛るくらいでいい。……こいつは、僕が倒す。メタグロスは鋼タイプだから、毒の心配はしなくていい」
「……うん、ありがとう。でもダイバ君が危なくなったら絶対助けるからね?」
「……ひゅうあん」
ダイバは小さく頷く。ジェムはアルカに騙されるし勝手に危なっかしいことをするとは思われているらしく無理やり縛れと言われるのは少し納得いかないけれど。ドラコとのバトルを通じてダイバにも心境の変化があったのだろう。幾分かジェムに対する態度は柔らかくなっていた。ラティアスもさっきのジェムの悲鳴を聞いたせいもあり、頷いた。
「ふん、賢い判断ですよ。とはいえ所詮あなたもジェムと同じ温室で育ってきた子供に過ぎません。そんな人たちに、わたしは負けませんから」
「言ってなよ、正々堂々戦ったら勝てないだけの癖に」
「アルカさん、私はあなたに伝えたいことがたくさんあるの。だから殺されるかもって理由でそこから出てきてくれないなら、無理やりにでもその心の殻をこじ開けてみせる!」
「本当に五月蠅いですね…
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