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豹頭王異伝
薄明
瀕死の鷹
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乗っ取られ元に戻れぬ状態にされてしまったか。
 心を痛めておられたのですが、ベック様に御会い出来て嬉しいと仰っておられます」
 ファーンの瞳から、涙が溢れた。
 思わずスカールの手を取り、胸に押し当てる。

 冷たい。
 生気が、全く感じられぬ。
 だが己の身体で温め、消えかかる生命の炎を再び燃え盛らせずにはおかぬ。
 強い意志を示す動作は、草原の民にも通じた。

 パロに住む石の民は信用出来ぬ、と猜疑心を緩めぬ者も多かったのだが。
 心配も露に周囲を取り囲む草原の民、全員が勇者に尊敬の眼差しを注いだ。
 ベック公ファーンの一念が通じたか、スカールの唇が微動。
 精神感応能力者の如くに微妙な陰翳を読み解き、タミルが口を開く。

「移り病かも知れません、伝染の懸念もあるから直に触れぬ方が良い。
 御気持は有難く頂戴する故、御手を御放し下さい」
 己の肉体が自由にならぬ苦痛に耐え、友の健康を案じる草原の鷹。
 スカールの裡に秘められた優しさに触れ、ファーンの瞳から再び涙が溢れた。
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