46話「ロリへの愛は世界を救うか?Q〜苦しみの魔王@〜」
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
凶悪な気配が漂う。
全ての戦略を無視し、距離という概念を吹き飛ばす空間転移をする際に放たれる波動だ。出現と同時に、遮断装置に入っている高級食材をグシャリッと潰れた。
それは――大きな氷の板に、目玉が付いた無機質な形をしていた。口はない。本物の魔族を目で見たのは初めてだ。
ブラドの言葉が確かなら――こいつは苦しみの魔王。
遮断装置のガラスケースは壊れていないのに、中に入っている食材が潰れているのは、こいつが魂だけの存在だという証拠だ。食の神が褒美としてもらす食材は、霊的な要素を含んでいるから、魔族に触れる事ができる。
「ははははっ!遮断装置を壊した報酬をあげよう!さぁ、僕と同化しよう!ブラドっ!ありとあらゆる苦しみに手を染め、美味しい美味しい食事をしよう!家畜だけど君は実に役に立つ家畜だったよ!」
魔王から聞こえたのは、耳が痛くなる……いや、魂が軋むような嫌な若い男の声だ。
この化物は、ブラドに氷の棒みたいなものを突き刺し、魂を吸い上げている。俺は魔王の油断を利用して、こっそりと詠唱を開始する。殺戮の魔王の力を使った魔法だ。
正直、ブラドは助からない。その犠牲を無駄にしない方が良い。唯一の肉親を失った白真珠が可哀想ではあるが、この絶望的な状況を齎したのはブラド当人だ。俺には、魔法を使う事くらいしか、現状を解決する方法が思い浮かばない。だから仕方ないんだ。
「お祖父様ぁー!?」
しかし、白真珠の絶叫とともに――俺が見ていた世界は変容した。
ガラスケースや白真珠の姿が周りから消え去っている。ブラックホールのような真っ暗な世界へと俺は放り込まれてしまった。
ドナルド先輩が言っていたのは、こういう事か……夢の世界に閉じ込めて、人間を虐める……恐らく、そういう魔法なのだろう。
夢の世界で、呪文を詠唱しても意味がない。魔法とは自身が持っている魔力・周りにある資源・生物、遠い資源を有効活用する技術であり、夢の世界では役に立たない。夢の世界で主導権を握るのは――創造主である苦しみの魔王当人のみだ。
「家畜ごときが僕に勝てると思うなんて身の程知らずだねぇ?こっそり詠唱しているのがばれていないと思ってたの?いいよっ!いいよっ!そういう傲慢さを拷問でへし折るのは大好きだからさぁー!
君たちに本当の絶望って奴を体験させてあげるよ!自分の無力さを知って後悔するといい!」
俺は魔王に、返事を返さなかった。こういう輩は無視するのが一番だ。相手にすればするほど、こちらを虐めようとしてくるに違いない。
それに、まだ可能性は残っている。超大国アメリカの事だ。遮断装置の予備の類を作る程度の予算はあるはずだ。それが起動するまでの間、耐えれば逆転できるという希望があるのだ。だから、耐えろ、俺。
アメリカの軍事予算は伊達じゃない。地球の先進国の
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ