エピソード3・始まりのオーメン
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たところ、作業工程の終盤ということで集中したいらしく、後でもう一度来てほしいと返事が返ってきた。よくわからないけど作業の邪魔するのも悪いし、また後で来よう。
というわけで近くにある武器屋に向かうと、中でシャイアンが自分のトマホークの手入れをしていた。私に気づいたシャイアンは、研磨の動きを止めずに話してきた。
「よく来たな、シャロン。すまないが今は手が離せない」
「構いません。私は連絡に来ただけなので」
「連絡?」
事情説明。
「なるほど……次元世界に渡る方法を探しにか」
「はい。それでしばらくサン・ミゲルを離れるので、街の守りはシャイアンさんとレディさんに頼ることになりますが……」
「心配いらない、元々街の守りは私の務めでもある。それに太陽樹の結界も、昔のそれより強固となった。おまえ達は何も気にせず、思う存分旅をしてこい」
「ありがとうございます」
「そうだ、旅立つ前にスミスの所へ寄ると良い。ジャンゴに渡す予定の武器が完成したとのことだ」
それを聞いた私はシャイアンの言葉に従い、スミスさんのいる鍛冶屋へ移動した。以前、ヨルムンガンドの封印が緩んだ際の地震で一度火事になったが、新しく建て直されたおかげで今では耐震耐火完全防備の頑丈な施設となっている。
「おぉ、来たな。早速だが、これを受け取ってくれ」
私の姿を見て顔が綻んだスミスは、すぐに傍に立てかけてあった剣を私に渡してきた。専用の鞘に入ったその剣は希少な金属を刀のように何層も重ねた頑丈な構造となっていて、鞘から抜くと鏡のように磨かれた刀身に私の顔が映った。装飾は最低限だが、刃は真っ白に輝いていて、見ているだけで荘厳かつ重厚な威圧感を感じるほどだった。
「ブラックスミスとしての技術を全て注ぎ込んだ、わしの最高傑作じゃ。銘はガラティーン、切れ味も頑丈さもこれまでの剣とは比べ物にならんぞ。決して折れない、曲がらない、鈍らないの三拍子を揃えた、わしの考え得る最強の剣じゃな」
「その分、費用がとんでもないことになってそうですね。以前、ここに持ってきた希少金属にオリハルコンやトラペゾヘドロンが入ってたことを考えたら」
「うむ、これ一本で豪邸が買えるぐらいじゃな」
「大盤振る舞いにも程がありますよ……」
「しかしジャンゴがイモータルやエターナルに勝てなければ、わしらもお陀仏だったんじゃ。金も力も出し惜しんだ結果、敗北して人類が絶滅しましたでは笑い話にもならん。それにな、わしはリンゴの息子達にしてやれることは出来るだけしてやりたいと思っておる。それで誰かが死なずに済むのなら、この上ない儲けものじゃ」
微笑むスミスに、私は改めてこの人を尊敬した。堂々と言い切ったその姿勢からは、大金をつぎ込んだ後悔なんて微塵も感じ
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