第十九話:邂逅
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びりついた死人の眼がこちらを見つめていることに気付いた。慌ててカービン銃を構えて数発発砲する。エプロンドレスに発砲音と同数の紅い花が咲く。漸くターゲットが沈黙していることに気付いたラシャは、カービン銃のセーフティをオンにすると足元に置いた。
そして、彼の世界が崩れ落ちる。
突如眼前の遺体がガラス細工のように砕け散った。ラシャの周囲を光りながら粉雪のように舞い散るその光景は、かつて観たアニメ映画の宇宙ロケットを打ち上げるクライマックスに似ていた。
舞い散っていた物体が再び足元に集まる。光は徐々に人型の輪郭を成し、ラシャの眼に真実を映し出す。
そこに横たわっていたのは、知らない女性だった。シンプルなシャツにホットパンツ。安物のゴムサンダルを履いた何処にでも居そうな女性──。しかし、その顔は無惨に吹き飛ばされ、脳髄と頭蓋骨のスクランブル・エッグをはみ出させていた。
──そんな、まさか。
ラシャの脳内に最悪の光景が浮かび上がる。
「また遭ったな」
そして、もう二度と聞くことのないはずの声に、ラシャは今度こそ我を失った。何せ、自らがこの手で頭をかち割ったはずの女の声が聞こえたのだから。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ…!?」
ラシャはどうにか声を絞り出す。声と同時に胃の中の物がせり上がってくるのをどうにか抑えつつ、ラシャは素早くカービン銃を拾い上げ、眼前の亡霊に突きつけた。
「何処を見ている?」
完全な予想外。声は右から聞こえたのだ。
「!?」
ラシャは声のする方向に視線を向ける。どうしたことか、もう一人ラウラ・ボーデヴィッヒが居るではないか。
──迂闊な。ラシャは土壇場で心の平衡を取り戻した。彼女が転校してきた際に轡木理事長から資料を受け取り、それらに目を通したことを思い出したのだ。彼女はドイツ軍のデザイナーズチャイルドだ。人造人間であり、人権無視の生物兵器でもある。同じような人間など当たり前のように存在していても可笑しくない。
ならば答えは簡単だ。彼女達は亡霊などではない。
ラシャの覚悟はこの時決まった。
「良いだろう。そんなに死人に憧れるなら、死人そのものにしてやろう」
刹那、3人目のラウラ・ボーデヴィッヒが左側から現れ、ラシャのカービン銃から弾倉を引っこ抜いてしまった。唐突に現れた予期せぬ伏兵の登場に、ラシャの反応が遅れた。彼に出来ることと言えば、とっさに引鉄を引いて、薬室に装填されていた一発の弾丸を眼前の的に叩き込む事だった。
この時聞こえた発砲音は、些か『不安になるような音』であった。同時に、先程の発砲時には無い奇妙な手応えに襲われる。素人でも分かる銃の異音にも動ずること無く、ラシャは左手に持っていた竹包丁を、カービン銃の弾倉を引っこ
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