第百五話 夜になってその十六
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「誰もわからないわね」
「夜ですからね」
「目だけが出るかイルミネーションの前を通ったらそ部分だけ身体が出るとか」
「そんな感じですね」
「それも面白いわね」
日菜子さんは運河の中を照らす緑の花々達を見ながら僕に話した、イルミネーションの大輪は運河の中で輝いていた。
「イルミネーションの中の黒猫も」
「あっ、言われてみれば」
「そう考えると黒猫もね」
「悪くないですね」
「そもそも鼠を捕まえて見ていて癒しになるから」
だからともだ、日菜子さんは僕に笑みを浮かべて話した。
「それならそれでね」
「いいですか」
「義和も猫好きでしょ」
「はい、動物は大体好きですけれど」
僕も日菜子さんに答えた。
「その中でも犬と猫は」
「どっちもなのね」
「好きです」
こう答えた。
「どちらがより好きかは聞かれると難しいですが」
「好きなことは好きね」
「はい、かなり」
僕も否定しなかった。
「黒猫も」
「私もよ、だからね」
「ここに黒猫がいてもですね」
「面白いと思ったわ」
僕に笑顔で話してくれた。
「イリオモテヤマネコとかね」
「あの猫は」
「そうそういないけれどね」
「こんなところにいませんよ」
僕は苦笑いで日菜子さんに返した、イリオモテヤマネコといえばだ。
「もう天然記念物ですから」
「あの島だけにいるね」
「はい、そうです」
本当に西表島にしかいない、このことはツシマヤマネコも一緒だ。ついでに言うと西表島にはもう一種類まだ存在が確かになっていないネコ科の生きものがいるらしい。
「そうした山猫ですから」
「ちょっとね」
「ちょっとどころか」
とてもだ。
「ここにはいないですよ」
「そうよね」
「けれど猫がいても」
日菜子さんの言葉を受けて僕はまた言った。
「面白いですね」
「猫はどの街並みにいても絵になるから」
「それも不思議ですね」
僕も運河のイルミネーションを観た、その上をライトアップされた船が通っていく。夜の闇の中に緑の花々が咲きその上を金色に照らされた船が通り過ぎていっていた。
第百五話 完
2016・8・25
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