暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
前提こそ真実を孕む
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だなぁオイッ☆」

ぎゃはっ、と嗤い声を響かせる少女は左手を振り、ウインドウを出現させる。

ALOに関連するシステムウインドウではない。ゲーム内で開ける簡単なメモアプリだ。

少女は、そこにあらかじめ記してあった工程表を一瞥し、大げさに頷いてみせる。

「ふんふん、こっからはアレか!一度(ホーム)に帰って()()()()をあっこに届けるだけか!!なるほどなるほどなるほどなぁ♪」

実に楽しげに顔をひん曲げながら、指さし確認のように少女は必要事項を脳裏に焼き付けていく。

それは単なる工程であり、他人に具体的な返答を期待したものではなかったはずだ。

だが。

その言葉に、応える声があった。

「楽しそうだな」

低く、低い。巌のような声。

ぞぅっ、と。

身体中の汗腺が沸騰する。全裸で肉食獣が闊歩する檻の中に放り込まれたような、恐竜のザラザラした舌で全身を削り取るように撫でられたような、原始的で根源的な恐怖が一瞬にして少女を包んだ。

「――――――――ッッ!!?」

少女は、ネコミミのニット帽を揺らしながら勢いよく振り返った。

だが、そこから先の具体的な行動を起こすことはできなかった。

理由は単純。

鼻先。

触れるか触れないかという、本当に寸前の位置に小揺るぎともしない、巨大な大戦斧(ラビュリス)の槍のような穂先が鎮座していた。

気付けなかった。

その事実が、冷水のように脊柱を滴り落ちていくにつれ、少女の全身がガチガチに強張る。

その偉丈夫は、大樹の影に隠れていた訳でも、背後から忍び寄ってきた訳でもない。映画のコマとコマ、その知覚できない領域に無理矢理差し込まれたかと思ってしまうほど唐突に現れたのだ。

ケットシーの視力において、暗がりで見えなかったという可能性が介在する余地はない。加えて、いくら笑い転げていても、安全な街中でもない中立域のド真ん中で索敵しないほどニット帽少女は間抜けでもなかった。

まさしく、たった一度瞬きした瞬間に、その男はそこに初めからいたような不動の体勢で屹立していた。

少女は何も言わない。

別に、突きつけられた穂先にビビっているとか、そういうことではない。

眼前の男にどういう体勢で臨めばいいのか測りかねているのだ。

すると、その真意を見透かしたかのように偉丈夫は軽く笑った。狼が咳をしたような声だった。

「おや?取り繕わないのか、卿よ。昼間、我と会った時はあんなに愛想が良かったではないか」

「……………………」

少女のおとがいに、緩やかな曲線を描いて汗が滑り落ちていく。

それをゆっくりと眺めながら、その男は何かを噛み潰すようにこう言った。

《戦
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