暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
前提こそ真実を孕む
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プリガンがいたからだ。それをメールで当の本人に知らせてくれなければ、恥ずかしい話だがずっとスプリガンの手のひらの上という可能性だってありえた。

素直な感謝を言いたいヒスイに、フニはああ、と間髪入れずにこう言った。

「ロベリアさんですよ」

女性の脳裏に、あの凸凹コンビのちっこいネコミミニット帽が思い出される。

「おー、ウチの新人組のか。意外やな、あんま接点とかなさそうなのに」

「いやぁ、ちょっと前から、フェンリル隊の期待の新星として色々教えてもらってまして……」

「ほーぅ、スミにおけんなぁ」

うりうりと気弱な少年をいじくりまわしていると、彼は彼で忙しいのか、直属の執政部の上司に呼びかけられて行ってしまう。大隊の長はヒスイだが、作戦が終わった今、大した地位ではない。そもそもいかな隊長と言えど、雑兵と井戸端会議をしていて許される訳はない。

肩をすくめて、自分は自分の仕事するか、と歩き出そうとしたヒスイは、ふと立ち止まった。

そして、ポツリと言う。

意図してではない。ただ、思ったことがぽろっと零れたかのような、少なくともその場で忙しそうに行き交う誰もが聞き取れないほどの小さな響きだった。



「あれ?でも、あのニセモンがおった時、あいつ首都(フリーリア)にいたか?」



引っかかりというには、あまりに小さい違和感。

僅かに首を傾げたヒスイだったが、その違和感は波に攫われていく砂絵のように手のひらからこぼれ落ちていく。

勝利の余韻も後押しし、彼女が隊員の一人に名を呼ばれた時には、ソレは跡形もなく脳裏から消え去っていた。










スプリガン首都《シナル》は、中央にそびえるドでかいジックラドから分かる通り、アンコールワットだとかマヤ文明の遺跡だとか、そこらへんを基盤として創りだされた街である。

それゆえに、その街を取り囲むのは、極北のノーム領にほど近いとはとても思えないほど生い茂った熱帯雨林だ。もっとも、今の季節的に時間帯完全ランダムで起こるスコールや、放って置いても湧いて出る厄介な毒持ちラフレシアMobとかの湧出(ポップ)はない。ジャングル特有の、背景小動物(クリッター)のやかましい鳴き声なども完全ストップ。

生の気配がナリを潜めた、一種異様な森の中をのんびりと歩く一人のF型(女性)プレイヤーがいた。

小柄な身体を包むのは、上下に別れたぴっちりするタイプのインナー。その上に要所を保護する軽鎧を装着し、下半身はロングスカートと見紛うばかりのマントをベルトで固定していた。

武装といえば、腰に携えた短剣(ダガー)一つ。いかにもゲームの高レア装備と思しき、拳大の紅玉(ルビー)が枝葉の隙間から射す月光を浴びて妖しく輝く。


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