第二十三話 元帥杖授与式
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も優しげだから若い娘達が騒ぐだろう。
アントンの話では本人は黒のマントと黒のサッシュを望んだそうだがそれだとちょっと地味だよな。大公夫人とフロイラインが反対したそうだがその気持ちは分からないでもない。まあピンクのサッシュは少し可愛らしすぎるが白のマントは良く似合っている。本人は白のマントを嫌がるかも知れんが誠実そうに見えるし清新な感じだ。
皆、居心地悪そうな表情をしているな。大勢の貴族達にとっては嘗ては敵対していたエーリッヒが自分達のトップになっているわけだから確かに表情に困るよな。軍人たちも同様だな、二十歳を過ぎたばかりのエーリッヒが元帥、宇宙艦隊司令長官だ、実力が有るのは認めているだろうが戸惑いもあるだろう。
エーリッヒが玉座の前に立った。そして恭しく片膝をつく。皇帝は少しの間エーリッヒを見ていた。
「ブラウンシュバイク公、このたびの武勲、まことに見事であった」
「臣一人の功ではありません。イゼルローン要塞駐留艦隊司令官、ゼークト大将を始め皆の協力の賜物であります」
「そうか、そちは謙虚じゃの」
「恐れ入ります」
「珍しい色のサッシュじゃ、……ピンクか」
「……」
普通返事をしないと不敬罪とか言われるけど、これは仕方ないよな。答えろっていうのは酷だろう。
「アマーリエとエリザベートの言う通りじゃの。よう似合っているぞ、なんとも可愛らしい事じゃ」
「……恐れ入ります」
皆、顔を見合わせているな。中には笑いを噛み殺している人間も居る。多分エーリッヒの顔は引き攣っているだろう。可愛いって言われるのを極端に嫌がるからな、暫くは傍に寄らないようにしよう。からかうなんてもってのほかだ。
ブラウンシュバイク公、元帥、宇宙艦隊司令長官、そのどれか一つでも怒らせるのは危険なのに今のエーリッヒは三つを兼ねているんだからな。怒らせるなんて自殺行為だ。俺はまだ死にたくない。クワバラ、クワバラ。
皇帝陛下は上機嫌で笑うと、式部官から渡された辞令書を読み始めた。
「イゼルローン回廊における反乱軍討伐の功績により、汝、エーリッヒ・フォン・ブラウンシュバイク公爵を帝国元帥に任ず。帝国暦四百八十七年四月十三日、銀河帝国皇帝フリードリヒ四世」
エーリッヒは立ち上がって階を上ると最敬礼とともに辞令書を受け取った。ついで陛下から元帥杖を受け取りそのままの姿勢で後ろ向きに階を降りる。気をつけろよ、転ぶんじゃないぞ。階を降り終わると皇帝フリードリヒ四世に対して最敬礼をした。
その後数歩後ずさり華奢な体を翻す。身に纏う白のマントが微かにはためき、ピンクのサッシュが現れた。そのまま、ほんの数秒の間、エーリッヒは黒真珠の間を見渡した。怒ってるよな、多分。皆顔を伏せてエーリッヒを見ないようにしているんだから。大体肩が震えている奴も
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