第十八話:殺人鬼と夏の空
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ヘリのパイロットが淡々と告げる。ラシャは軽く頷くと、ヘリのドアを開けた。湿った風が顔を撫でる。
「ファストロープ降下準備」
背後から少々急かされるように声が飛ぶ。
「いや、このままでいい」
自然と、ラシャの口から言葉が漏れた。軽く爪先を床に打ち付けて身を乗り出す。
「お、おい!?」
ヘリパイロットが狼狽して声をかける。
「それでは、御機嫌よう」
ラシャは軽々と身を翻して、ヘリから飛び降りた。ヘリのローターによってかき回される風を何ともせずに、近くのビルの屋上へ三点着地を決めた。
「なんて無茶なやつだ!!おい!?生きているのか!?」
ヘリパイロットが慌てて無線を送る。
「大丈夫だ、何ともない。これから仕事に取り掛かります」
ラシャは装着された小型無線で返事を寄越す。適当に手を振って健在であることを伝えている。ヘリパイロットは安心したのか、ヘリはすぐに遠ざかっていく。
「さてと」
ラシャはすぐに見に付けていた野戦服のセットを素早く脱いだ。その下には青色の作業服が丁寧に着込まれていた。一日目に身に着けているべき服装は野戦服ではなく、この作業着だ。ポケットの地図を拡げて行くべき場所を暗記していく。
全ての場所を把握したラシャは、自らが立っているビルの横に点在している電柱の一つに飛び移った。そのまま慎重によじ登ると、頂点付近にある変圧器のケーブルの一つにポケットに入っていた洗濯ばさみのような機械を慎重に挟み込み、急いで電柱から降りた。
「最近の世の中は恐ろしいものだな、あんな洗濯バサミもどきでレーダーかよ」
臨海学校一日目においてラシャに命じられた任務は、街中に対空レーダーと探知機を仕掛けるというものだった。小型化を念頭に置いたお陰で、複数仕掛けなければならない有様だが、監視の役目はほとんど問題ない事になる。
このようなややこしさの極みを凝縮した作業に従事している最大の理由に、篠ノ之束の介入の予想はごく一部のものにしか知らされていない事にある。彼女はテロリストであると同時に、ブラックボックスの多いISの研究の最前線を独走している麒麟児でもある。
故に混沌を撒き散らした事を抜きにしても、自国陣営に引き込もうと暗躍する輩が後を絶たず、IS学園に強引なコンタクトを取る者が爆発的に増えていた。ラシャも礼儀を弁えない輩を今年度においても二桁台は葬り去っている。
本来ならば、電気工事の業者になりすまして敢行すべき作業を不審者丸出しの様体で行ったため、全ての指定された地域へ小型レーダーを設置するのに一日中かかってしまった。
ラシャは、ビルの屋上に隠した野戦服を始めとした装備の類を回収すると、旅館から数キロ離れた位置にある民宿で一夜を明かすことになっ
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