巻ノ八十四 高野山その五
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「そうさせて頂きます」
「かたじけのうございます」
「鍛錬の場も書も」
「そのどちらも」
「用意しお貸しします」
そうするというのだ。
「ですから」
「はい、それでは」
「書はやはり」
「常に読んでいきたいです」
学問をする為だ、このことは昌幸も幸村も忘れない。学問から己を磨き時が来れば学問で備えた力を活かすつもりなのだ。
「上田からも多く持ってきましたが」
「この高野山は歴史も長く」
「書もですな」
「仏門のものだけではなく」
実に多くの様々な書がというのだ。
「ありますので」
「それでは」
「目録も送りますので」
どの様な書があるかだ、高野山に。
「所望の書があれば」
「お話させて頂きます」
「ではその時は」
「お願いします」
こう話してだ、昌幸は座主と話をしてだ。九度山に入った。そのうえでその山に居を構えて住みはじめた。
幸村は九度山に入るとその日のうちに鍛錬と学問をはじめた。槍術に水練、忍術と上田でしていた鍛錬をそのままだ。
励んでいた、それは十勇士達も同じでだ。
彼等は共に日々汗を流していた、だがここで十勇士達は幸村と山を駆け巡りつつだ。主に対してこんなことを言った。
「高野山も鍛錬になりますし」
「今も行くことがありますが」
「やはり山で鍛錬していますと」
「上田の時と同じくですな」
「忍術にいいと感じますな」
「そうじゃな、山を駆け巡ることはな」
まさにとだ、幸村自身山を駆け巡りつつ応えた。
「よい鍛錬になる」
「左様ですな」
「忍術の鍛錬に最適です」
「足腰、手や肩も鍛えられます」
「こんなにいいものはありませぬな」
「水練と共に忘れてはなりませぬな」
「木では猿の様にじゃ」
幸村は獣にも例えて話した。
「水では河童の様にじゃ」
「そして地では狼の様に」
「そう動くのですな」
「そうじゃ、平地では馬の様にでじゃ」
こうも言った。
「動く様にするぞ」
「わかり申した」
「ではです」
「このまま鍛錬を積み」
「そうして」
「いざという時に備えるのじゃ」
こう言うのだった。
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