巻ノ八十四 高野山その四
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「あそこで暮らすとしよう」
「何か言われませぬか」
「それ位ならな」
「高野山に近いのだ」
「まだ大目に見てもらえる」
徳川からもというのだ。
「だからな」
「あの山にですな」
「移る」
こう言うのだった。
「そしてじゃ」
「十勇士達を」
「出そう」
「その動きを調べさせ」
「我等も考えるぞ」
「まず知ってですな」
「そうしてから正しく考えられるからな」
それ故にというのだ。
「だからな」
「はい、それでは」
「うむ、十勇士達をな」
「送ります」
幸村も応える、そしてだった。
二人も周りの者達も高野山から九度山に移った、その時に高野山の座主は昌幸に自ら会いに来てそのうえで言ったのだった。
「やはり」
「はい、おわかりですか」
「そうだと思っておりました」
昌幸の心を察しての言葉だった。
「真田様も」
「答えることは」
「ですな、では拙僧は」
その昌幸にさらに言った。
「お見送りさせて頂きます」
「では」
「はい、高野山の者達は何も言いませんが」
「しかしですな」
「お気付きかと思いますが」
「見ている者がいますな」
「やはりお気付きでしたか」
座主も昌幸の言葉を聞いて頷いた。
「お流石です」
「いえいえ、これも当然のこと」
昌幸は落ち着いた声で応えた。
「それがしを警戒する御仁がおられます故」
「ですな、しかし」
「はい、承知のうえでのこと」
「だからですな」
「このことを受け入れて」
そしてというのだ。
「時を待ちます」
「そうしますか」
「今は」
「そして時が来れば」
「九度山からですな」
「それも」
「ですか、しかしこの高野山にいるよりも」
座主は必要なことはあえて語らないやり取りの中で昌幸の言葉と考えを察しつつそのうえで昌幸に応えて述べた。
「その方がいいですな」
「お察しかたじけない」
「では」
「はい、短い間ですが世話になりました」
「あの山も我等の山のうちなので」
座主は昌幸に穏やかな言葉で応えた。
「何かあれば」
「お話をですか」
「持って来て下さい」
「そしてですな」
「出来る限りのお力を」
昌幸、そして幸村にというのだ。
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