巻ノ八十四 高野山その三
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「わしは信玄様、四郎様にお仕えしてきた」
「そうですな」
「武田家二代にな」
「そしてそのうえで」
「お二方それぞれに進言しお止めもしてきた」
「だからこそ」
「茶々様にも出来る」
こう言い切った。
「まして元は十万石の大名だったのじゃ」
「その重みもあり」
「わしなら出来る」
「茶々様をお止めすることが」
「言葉でもな」
「そうですな」
「しかしそれが出来るのはわしだけじゃ」
あくまで、というのだ。
「若し大坂で戦が起こればな」
「そして大坂に入れば」
「わしなら茶々様をお止めして静かにして頂く」
「しかし」
「他の者には出来ぬ」
「では」
「うむ、今の大坂はどうにもならぬ」
その何もわかっておらず見えず聞こえない茶々が実質的な主であるからだ。
「恐ろしいことになるぞ」
「そうなりますか」
「そうじゃ、勝手に己の首を絞めてな」
「そのうえで」
「己で墓穴を掘るわ、しかしじゃ」
「そこで戦になり」
「わしが入る」
大坂城、そこにだ。
「そのうえで何とでもしてやろう」
「ではその為にも」
「今は色々と考えて文武の修行に励んでいくぞ」
「わかり申した」
「してじゃ、我等は動けぬが」
ここでまた我が子に言う昌幸だった、今度言うことはというと。
「十勇士達は違うな」
「はい、あの者達ならです」
「何とかじゃな」
「高野山から出てです」
「天下を見て回ることが出来るな」
「はい」
その通りだとだ、幸村も答えた。
「あの者達の忍の腕なら」
「それならばな」
「出来ます」
こう断言した。
「ご安心下さい」
「ではな」
「はい、あの者達を各地に送り」
「天下を見てもらおう」
「では」
こうした話もしてだ、昌幸と幸村達は家族とついてきた家臣達を連れてそのうえで高野山まで入った。そうしてだった。
高野山での生活をはじめた、だがここでだ。
すぐにだ、昌幸はこんな話をした。
「ここよりもだ」
「高野山よりも」
「うむ、九度山に行こう」
こう言ったのだった。
「そうしよう」
「そうされますか」
「あそこなら御主の家臣達も動きやすい」
十勇士、彼等もというのだ。
「だからな」
「あの者達の為にも」
「ここは寒く大助の身にも応えよう」
「では」
「九度山じゃ」
そこに移ってというのだ。
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