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殺人鬼inIS学園
第十五話:草食動物と殺人鬼
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「どちらまでですか?」

「花月荘という旅館へ。あと領収書くれ」

「畏まりました」


「本当にごめんなさい!!」

「大丈夫ですよ、時間にも間に合ったことですし」

 案の定熟れたトマトが如く赤面して謝る真耶に対して、ラシャは穏やかな微笑みを以って制すると、眼前に建つ旅館とその付近の海原へ視線を向けた。照りつける日光を余すこと無く跳ね返す海は何処までも蒼く澄み渡り、ゴミ一つ落ちてない砂浜もまた美しく、文字通り銀を砂にしたような美しさであった。だからこそ。

「似合わんな…」

 思わずラシャはそうこぼした。此度の臨海学校の内容は、初日は慰安を目的とした自由時間であり、二日目はISの各種装備の試験運用に丸一日を費やした後に三日目に学園へ帰還するという筋書きだ。初日に慰安が入っているとはいえ、本分は装備の試験運用だ。当日貸し切りにするとはいえ、明らかな観光地で物騒なものを扱う意図がラシャには理解できなかった。
 そもそも、IS学園自体が人工島という一種の世相と法律からは隔絶された環境下に置かれているのに、態々学園外にて実施試験を行うという点が意味不明である。ISという兵器を扱う訓練校としては明らかに場違いな毛色をした行事に、ラシャは深々と嘆息した。
 その意図を察してか否か、真耶が心配そうに彼の顔を覗き込んだ。

「ど、どうしました?」

「いえ、こんな所でIS実地試験なんて出来るのだろうかと思いましてね…」

 渋い表情のラシャに対して、真耶は彼の疑問に潜む棘を和らげるように満面の笑みを浮かべた。恐らく飲み込みの悪い生徒にもこうして真摯に向き合っているのであろう。

「実地試験そのものは、旅館から離れた学園が保有しているビーチで行う予定なんです。切り立った崖によってドーム状になっているお陰で外部からの侵入は困難になってるんですよ」

 懇切丁寧に説明してくれたのだが、やはりコスト面や機密保持の関係を考えるとIS学園で実地試験を行えば良いのではないだろうか。と、ラシャは感じたが、それ以上言及する気はなかった。彼の任務は護衛であって、プランの立案ではないのだから。

 臨海学校でお世話になる花月荘という旅館は、毎年IS学園が利用している旅館らしく、女将と思わしき女性と山田先生との間には最早恒例行事と化している部分があるようで、話はトントン拍子で進んでいく。用務員であるラシャは山田先生が話を進めていく様子を見守っていたが、完全に手持ち無沙汰になってしまったので、ネクタイを緩めて応接間のソファに腰掛けて旅館のパンフレットを流し読みしていた。
 この旅館は見てくれこそ古いものの、内装や電化製品の設備の類は最新鋭のものを採用している。しかも、古いと評した外観も貧相さや古臭さは感じられず、きちんと手入れが行
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