第四章
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「射よ!」
馬上からだ。こう命じたのである。
「林の中に弓を射よ!」
「はっ!」
「わかりました!」
足軽達はその命に応えて弓を構えた。そうしてだった。
矢を林の中に放つ。するとだ。
林の中から叫び声がした。そのうえで。
林から慌てて敵の足軽達が出て来た。これには誰もが面喰らった。
「なっ、伏兵!?」
「林の中に伏兵を潜ませていたのか」
「そうしていたとは」
「危ういところだった」
長宗我部家の誰もが驚いた。敵は隙あらば林から戦っている長宗我部家の軍を横か後ろから襲うつもりだったのだ。そうなれば危ういところだった。
伏兵達は林から慌てて逃げ去る。それを見てだった。
元親は己の兵達にだ。今度はこう言った。
「追うぞ!」
「このままですか」
「追撃ですか」
「そうじゃ。敵を追い徹底的に倒す」
そうするというのだ。
「逃げる敵を討て!褒美は思いのままじゃ!」
「わかりました!」
「それでは!」
足軽達も応えてだ。彼等は元親を先頭に逃げる敵を追った。それを見てだ。
国親は目を瞠った。そしてこう言うのだった。
「何と、先頭に立っておるぞ」
「はい、若殿御自ら先頭に立たれています」
「馬に乗られ敵を追っています」
「そうされています」
「信じられん」
半ば呆然としてだ。国親は言った。
「あ奴が。臆病ではなかったのか」
「わかりません。しかしです」
「若殿は馬も巧み操られています」
「まるで御自身の手足の様に動かされています」
「見事な馬術です」
「あそこまで馬が達者とは」
「馬も乗れないのではなかったのか」
国親も言う。元親はとにかくひ弱だった筈なのだ。
しかし目の前の我が子は馬を巧みに操り自ら先頭に立ち逃げる敵に迫っていた。そうしてだった。
敵に追いつき次々に槍を繰り出す。逃げられないと覚悟を決めた敵は反撃に転じる。
だがその彼等に次々と槍を出し倒していく。その動きは。
「理に適っておる」
「槍捌きがですか」
「よいと申されますか」
「うむ、敵の目と目の間を狙っておる」
親泰の言う通りにしているのだ。だが国親はこのことを知らない。
「あれでよいのじゃ」
「向かって来る敵を恐れもせず倒されていますな」
「何も怯えておられませぬ」
「そして兵もよく率いておられます」
「これは」
「鬼じゃ」
国親はこう言った。
「あれは鬼じゃ。強いわ」
「姫ではないですか」
「最早」
「うむ、姫若子は誤りじゃった」
こうまで言うのだった。
「鬼じゃ。それじゃ」
「では鬼若子ですか」
「そうだというのですか
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