地球が滅びた日
[1/2]
前書き [1]次 最後
数年前、地球に良く似た大気成分を持つ巨大天体が、地球近くの宙域で発見された。
人々はこれを「第2の地球」と呼び、地球外生命体との接触の夢にあふれていた。
だが、この巨大天体が、地球に急接近してくるなど一体誰が予想しただろうか。
巨大天体は、今や太陽よりも大きく、空にその身体を浮かばせていた。
巨大天体の引力により、洪水、日照り、台風などの異常気象が人類に牙を剥く。
暖流、寒流、潮の満ち引きも狂い、食糧生産はストップ。餓死者が相次いだ。
食糧は完全配給制となり、生存者達は、ただ世界の終わりを待っているしか無かった。
そしてついにその日はやってきた。
巨大天体は、南米の空を埋め尽くすほどにまで地球に接近。
南アメリカ大陸は、無残にも大陸ごと剥ぎ取られ、巨大天体に吸収されてしまった。
そして、北アメリカ大陸、更には南極大陸までもが、巨大天体に引きずり込まれていった。
不幸中の幸運、日本列島は地球上で最も巨大天体から離れた位置に存在していた。
しかし、地球に起こった異常に日本国民は気づいた。
アスファルトの道路がピシピシと音を立て、ひび割れていく。
まるで、地球が悲鳴を上げるかのように。
巨大天体は、地球そのものを粉々に粉砕し、吸い込もうとしていたのだ。
「教授、私達人類がこの状況で生き延びる事はあるでしょうか」
「無い訳では無い。今、地球を吸い込んでいるのが、地球と瓜二つの天体だからだ」
「・・・と、言いますと」
「吸い込まれても、その衝撃に耐えられれば、もしかしたら、生き延びられるかもしれない」
地面は、次から次へと巨大天体へ落下していく。
「我々は自分達が汚した地球でもゴキブリみたいに這いずり回って来た・・・そう簡単には滅びない。」
「だが、この地球が今日、滅びるのは確実と見ていいだろう」
地球の大部分は吸収され、遂に日本列島付近を残すだけとなった。
「もしも人類が生き延びたら、今日この日を、一生、いや、永遠に忘れないでしょうね」
「ああ。何せ、今日は『地球が滅びた日』だからな・・・・」
日本列島は、ついに捻じ切られ、巨大天体へ吸い込まれていった。
僅かに残存していた大気に響いたその轟音は、地球の咆哮の様にも聞こえた。
あらゆる生命、建造物、そして地球は、巨大天体の恐るべき引力の前に、何の抵抗も出来なかった。
こうして、「第2の地球」は「第1の地球」を完全に飲み込み、遥か彼方へと飛び去っていったのだった。
もし、人類が生き延び、あの「第2の地球」に住み着いたとしても、あれは地球とは呼べないだろう。
地球は、宇宙を飛び回って惑星を食い散らかす、あんな化け物のような天体ではないのだ。
人類が平和に暮らす地球は、もう宇宙のどこにも存在していない。
・・・だが、その地球も、真の地球とは呼べないの
前書き [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ